「なんでやねん」はおかしな表現?
「なんでやねん」は最もよく知られた関西弁の一つだ。
ある大学の関西圏での調査では、好きな関西弁ランキング1位に選ばれている。
この語尾の「ねん」、強調・詠嘆・命令など広範なニュアンスを担い、関西弁になくてはならない存在だが、いつ頃から使われているかご存知だろうか?
まず、日本語の断定の助動詞の歴史を辿ろう。
現在のルーツとなる「である」は、室町時代以降に「であ」に、さらに東西日本でそれぞれ「だ」「じゃ」に変化した。
江戸末期~明治頃、近畿では「じゃ」の舌の摩擦が落ちた「や」が生じ、これが現代近畿方言の主流となっている。
この断定「や」が助詞「の」とくっついた「のや」が、「するのや→するねや→するねん」と発音しやすく変化した。
実はこれ、大阪で20世紀に入ってから起こった変化なのだ。
この「ねん」、名詞や副詞に直接接続することはできない。
そんなとき、関西人はよりにもよって断定の「や」を間に挟んだ。
まさかの重複。
つまり、共通語風に言うと「なんでやねん」は「なんでだのだ」なのだ。
誤用、と考えるのは少し早い。
そもそも共通語の「なのだ」の「な」とは何だろう?
これは文語の断定の助動詞「なり」の残存で、現代文法では断定「だ」の活用形と扱われている。
断定の重複という範囲では、実は関西弁に限った話ではないのだ。
ただ、不思議なのは、関西でも「なのや/なんや」とは言う。
「なねん」でなく「やねん」になったということは、別の変化が起こったということだ。
これと前後して、「ねん」が「や」に由来するという認識は希薄化していると思われるので、もしかすると本当に誤用から生まれたのかもしれない。
由来の希薄化による、さらなる進化形がある。
若年層に「やねんやんか」などの新表現が登場しているのだ。
共通語にするなら「だのだじゃんか」。もはや呪文でしかない。
そもそも「やんか」自体が共通語の影響と言われ、年配層は使わない。
しかし、裏を返せば、それだけ柔軟に表現を進化させてきたということである。
歴史上長らく言葉の発信地だった関西には、まだまだ伸びしろがある。
ジャンル | ことば・文学 |
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掲載日時 | 2020/5/23 16:00 |
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