無名指ってどの指?
ある指は、別名を無名指という。
これは元々中国語で、現在でも使われている(簡体字は「无名指」)。
日本語でも、この指を表す最も古い語形は「ななしのおよび」だとされている。
ある指とは、薬指だ。
薬指の名前の由来には、「薬を塗ったり水に溶いたりするのに使うから」という説と「薬師如来が右手のこの指を曲げて我々に向けているから」という説がある。
『日本言語地図』によれば、東日本に「クスリユビ」、西日本に「ベニサシユビ(=女性が唇に紅をさすのに使う)」の類が多く分布するほか、1970年前後の調査当時でも周辺部に「ナナシユビ」の使用が見つかっている。
「クスシノユビ」は13世紀、「ベニサシユビ」は室町末の誕生と言われるから、それまでは名無しが名前だという、珍野苦沙弥もびっくりの状態だったわけである。
この「無名指」の由来、てっきり「他の指と比べて何も特徴がないから」だと思ったら、別の説があるらしい。
それは、この指は「魔法の指と見なされ、名前を知られて相手に支配されないよう、あえて無名を名乗ったから」だというのだ。
『ゲド戦記』をイメージしてもらうと分かりやすいが、中華圏では本名を諱(いみな)として呼ぶことを避けたり、悪霊に呼ばれないようあえて子供に汚い名前をつける辟邪名(へきじゃめい)が存在したりした。
だから、魔力が宿るこの指も名前を呼ぶことが憚られ、無名と称したらしい。
そして、同様の文化は欧米にも存在する。そのため、この「無名指」の言い方は世界の広い範囲に存在するというのだ。
ここで、ふと頭をよぎるのが結婚指輪だ。
なぜ、結婚指輪を左手の薬指にはめるのかご存知だろうか?
それは、古代ギリシャで、左手の薬指には心臓へ繋がる太い血管があると考えられていたからである。
薬指を神聖なものととらえる発想は、「無名指」とここで繋がる。
普段、一番存在感の薄い指だが、裏にはこれだけのストーリーがあるのだ。
ちなみに、薬指につける指輪全般のことは、アニバーサリーリングと呼ぶ。
ジャンル | ことば・文学 |
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掲載日時 | 2020/4/21 16:00 |
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