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プレイボーイ在原業平のお相手女性の最高齢は?

在原業平は平安時代の初期(825-880)を生きた歌人です。

先日紹介した「六歌仙」にも選ばれ、歌の名手として知られています。

業平を語る上で外せないのが『伊勢物語』。

在原業平をモデルとした主人公「男」がいろんな女性と恋愛する様子を描いています。

 

普通の恋愛から、后(当時の天皇の妻)・斎宮(神に仕える女性)を相手にする禁断の恋までさまざま描かれます。

 

そんな中で少し異色なお相手が…なんと御年99歳のおばあちゃん。

『伊勢物語』第63段・つくも髪という話に出てきますので、簡単にあらすじを紹介します。

【あらすじ】

色好みの気が抜けないある老女は、なんとか「イイ男に出会いたい」と思いますが、さすがに口に出しては言えません。

そこで、老女は三人の息子を呼び寄せてある夢を見たと言います。

(夢の内容については詳述されないのでわかりません)

 

三人の息子のうち、上の二人はとりあわないのですが、優しい三男は「イイ男が現れるお告げなのではないか」と言ってあげます。

さらに三男は、母を当時プレイボーイとして知られた業平に会わせてやりたいと思い、業平を捕まえて事情を話します。

 

そして業平は老女の男を思う気持ちや、母の願いをかなえてあげようとした三男の気持ちに心を打たれ、老女に会ってあげるのです。

 

(正直、個人的には老女・三男・業平、三人ともクレイジーだな!と思ったのですが、)

業平はどんな女に対しても差別をしない、素晴らしい!と締めくくられています。

 

このストーリーの中で、業平が詠んだ和歌を引用してみます。

百年に 一年足らぬ つくも髪 われを恋ふらし おもかげに見ゆ

(口語訳)

百年に一年足らない(99歳の)白髪のおばあさんが私を恋しがっているらしい姿が幻として見える

 

難読漢字クイズで見かける「九十九」(つくも)。

「百」-「一」=白

「100」-「1」=99

ということで、九十九髪とは白髪のことを言ったようです。

(髪の様子が「つくも」という水草に似ているからとも)

 

当時の平均寿命からして、正直本当に99歳の女だったのかはアヤシイところです。

八百万の神は文字通り800万の神様のことではなく、それくらい「たくさん」の意味を表すのと同様、

とにかく年を取った女を99歳と表現しているのかもしれません。

 

現実の業平は天皇の子どもでありながらも、政治的には出世も見込めず恵まれない状況でした。

しかしそんなことは意に介さず、奔放に心のまま恋愛し、和歌を詠む姿が、現代のわれわれにとっても魅力的に見えるのでしょう。

 

さっと読むと、ちょっと異色な箸休めエピソードに見えますが、

業平の不遇の状況も照らし合わせると、弱い立場の人を自分に重ねて放っておけない業平の優しい一面も見えてくるようです。

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一介の予備校国語講師
ことのは

大阪府出身・在住。
同志社大学文学部国文学科卒業。
現在は予備校で(比較的)新人講師として勤務。
担当ジャンルは【古典文学】

授業では、本編よりも脱線話の方がウケて悲しい反面、過去の自分もそうだったので生徒を責められません。小ネタを収集する日々です。

基本どんなジャンルでも興味あり!
でも、結局言葉(=ことのは)のもつ魅力から逃れられずここまで来てしまいました。
尊敬する人は中2のときからロザンの宇治原さん。好きなことは、得意ジャンルが全く違う同居人とクイズ番組を見ながらやいやい言うこと。

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