『源氏物語』は本当に名作なのか?
超・有名だし、歴史でも習うし名作なんでしょ?という声が聞こえてきそうです。
さて、本当にそうでしょうか?
確かに大したことない作品は後世にまでは残らないでしょう。
ただ『源氏物語』のあらすじを追っていくと、少しひっかかる点があります。
問題となる部分のあらすじを紹介します。
時の天皇・桐壺帝は「更衣」という女性を尋常でないほど愛します。
しかし更衣は、光源氏を生んですぐに死去。
あまりに落ち込んだ父・桐壺帝は更衣に似ていると噂の藤壺という女性を妻に迎え入れ、寵愛します。
実母の記憶がほぼない光源氏は藤壺を母と慕いますが、年齢としては親子というより姉弟。光源氏は成長するにつれ、藤壺のことを一人の女性として見るようになります。
そして一夜の密会により藤壺は、表向きは桐壺帝の子・本当は光源氏の子という不義の子を産みました。(のちの冷泉帝)
簡単に言うと、相関図はこちら↓
このあらすじを読んでどう思われましたか?
藤壺と光源氏の関係に焦点を当てるならば、障壁を超えた純愛(?)なのかもしれませんが、
客観的に見ると、これただの不倫ですよね?しかも天皇家の。
『源氏物語』は攻めた角度から見ると「天皇家の不倫物語」と言うこともできます。
当時の天皇は絶対的な存在です。
いくら架空の話とはいえ、時代が時代なら処罰されてもおかしくありません。
当時の天皇も『源氏物語』を読んでいたらしいのですが、
「おもしろいなあ、続きはまだ?」と、好意的な反応だったようです。
以前の記事「『源氏物語』の作者は紫式部。○か×か?」で紹介したように、
当時は印刷技術などもちろんなく、その本が欲しければ、自分の手で写すしかありませんでした。ですから、物語はものすごくゆっくり伝わります。
また、作者と読者の物理的距離がかなり近く、作者は読者像を限定して想定できましたし、読者も作者に感想を伝えやすい環境だったと考えられます。
もし「炎上」しそうだと思ったら書き換えや訂正は、
不特定多数に一気に広がる現代と比べて比較的簡単だったはずです。
タイトルのような問題を出しておいてなんですが、
私一個人に「名作かどうか」は判断しかねます。
もちろん1000年読み継がれてきた、そして淘汰されずに残った点は評価されるべきです。
ただ、その観点に評価が偏りすぎている気もします。
残っているから名作、というわけではなく、
古典作品がどのような背景で、当時の人たちには、どのように受け入れられていたのかも評価の観点としては必要かもしれませんね。
ジャンル | ことば・文学 |
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掲載日時 | 2021/3/26 16:00 |
大阪府出身・在住。
同志社大学文学部国文学科卒業。
現在は予備校で(比較的)新人講師として勤務。
担当ジャンルは【古典文学】
授業では、本編よりも脱線話の方がウケて悲しい反面、過去の自分もそうだったので生徒を責められません。小ネタを収集する日々です。
基本どんなジャンルでも興味あり!
でも、結局言葉(=ことのは)のもつ魅力から逃れられずここまで来てしまいました。
尊敬する人は中2のときからロザンの宇治原さん。好きなことは、得意ジャンルが全く違う同居人とクイズ番組を見ながらやいやい言うこと。
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