「六歌仙」ってだれが決めたの?
「六歌仙」という言葉をご存じでしょうか。
「六歌仙」とは、
・和歌の名手である【僧正遍照・在原業平・文屋康秀・喜撰法師・小野小町・大友黒主】の6人の総称
・6人の中で小倉百人一首に選ばれていないのは大友黒主
この辺はクイズ番組でも見かける問題なので、ご存じの方もいらっしゃると思います。
ではこの「六歌仙」、だれが決めたのでしょうか。
答えは【紀貫之】です。『土佐日記』を書いた人ですね。
西暦900年代に成立、約1000首の和歌を収めた『古今和歌集』という和歌集があります。
紀貫之は『古今和歌集』の撰者の一人でした。
『古今和歌集』には、紀貫之が書いた「仮名序」と呼ばれるまえがきのようなものがあります。
「仮名序」には、(貫之が考える)和歌の本質や和歌の歴史、『古今和歌集』の編纂意図などが記されています。
「六歌仙」の謎を解明するために「仮名序」を読んでみましょう。
まず、中盤で優れた歌人として、2人の歌人が紹介されています。
・柿本人麻呂:彼こそが「歌聖」である!
・山部赤人:人麻呂といい勝負の素晴らしい歌人!
この二人は奈良時代に成立した『万葉集』を代表する歌人です。
そして、貫之は「しかし和歌の本質を理解して詠む人は少なくなってきた」と続けます。
ここで紹介されるのが「六歌仙」。
・僧正遍照:和歌の様子はいいけれど真実味がない。絵の女性に心を動かすようだ。
・在原業平:表現したい心の部分はいいんだけど、言葉がついてきていない。花が枯れたのに香りは残っているようだ。
・文屋康秀:言葉遣いはうまいけど、内容と合わない。商人のくせに派手な衣装を着ているみたい。
・喜撰法師:ひかえめな和歌。そもそも作品数が多くないから分析できない。
・小野小町:身に染みる歌だけど強さがない。女性だから仕方ないのかな。
・大友黒主:あまり洗練されていないよね。
あれ?六歌仙って和歌の名手のことじゃないの?悪口っぽく聞こえるんだけど?と、びっくりしませんか?
上記はわたしの意訳ではありますが、
(大学受験の古文レベルですので原文もおすすめ)
先に述べられている「柿本人麻呂・山部赤人」ほどベタ褒めというわけではなさそうです。
さらにこの後、本文では
「和歌を詠む人はたくさんいるが、これまで挙げた人以外は取り上げるに値しない」とばっさり切り捨てています。
この文脈を文字通り受け止めるなら、
六歌仙のことを認めてはいるが、人麻呂と赤人には及ばないということなのでしょう。
「六歌仙」という総称も、後世になってつけられたもののようです。
なにはともあれ、1100年の時を超えて歌い継がれる和歌をわたしたちに残してくれたという点では、彼らは紛れもなく「歌仙」なのではないでしょうか。
ジャンル | ことば・文学 |
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掲載日時 | 2021/2/12 16:00 |
大阪府出身・在住。
同志社大学文学部国文学科卒業。
現在は予備校で(比較的)新人講師として勤務。
担当ジャンルは【古典文学】
授業では、本編よりも脱線話の方がウケて悲しい反面、過去の自分もそうだったので生徒を責められません。小ネタを収集する日々です。
基本どんなジャンルでも興味あり!
でも、結局言葉(=ことのは)のもつ魅力から逃れられずここまで来てしまいました。
尊敬する人は中2のときからロザンの宇治原さん。好きなことは、得意ジャンルが全く違う同居人とクイズ番組を見ながらやいやい言うこと。
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