お正月に行われていた安産祈願の風習とは?
みなさまはお正月、いかがお過ごしだったでしょうか。
ゆっくり過ごせましたでしょうか。
さて、昔のお正月はどんなだったのでしょうか。
変わりダネで言えば、正月十五日に行われた「粥杖(の遊び)」というものがあります。
正月におかゆを作った際にかきまぜた棒を使って女性の腰をたたくと、「男の子が生まれる」「安産になる」とかいう言い伝えがありました。
粥杖の遊びは正月に宮中でも行われ、ちょっとしたゲームのようになっていました。
かの清少納言も『枕草子』の中で、
意訳:みんなが粥の木を袖の中などに隠して、他の人をうかがい、自分は決して打たれまいと背後を気にしている様子がおもしろい
と述べています。
自分は誰かを打ちたい。でも打たれて悔しい思いはしたくない。ある意味とても緊張感のある一日でした。
「ちょっと物を取ってあげましょうか」と言って油断させた隙に打ったり、
新婚女性の腰を夫の前で打って、二人が恥ずかしがるのを冷やかしたり…と無礼講の一日でした。
無礼講とはいえ、粥杖が大事件を引き起こしたこともありました。
「とはずがたり」という作品に詳細が収められています。
作者の二条は後深草院という天皇の愛人です。
(二条という人物についてもおもしろい&長くなりそう、なので詳細は次回以降に送ります。)
正月に後深草院を含む男性陣が、宮中に仕える女性たち(女房)を粥杖のイベントに乗じてめった打ちにします。
さすがに、と腹が立った女房たちは、協力して男性陣にやり返しを計画します。
作戦決行当日、院がここに来るだろうと予測した部屋で待ち伏せます。
さて、予想通りに院はやってきたので、思い通り杖で打ち、やり返しをすることができました。
院からも「今後このようなことはしません」と詫びが入ります。
うまくいった、と女房たちはほくほくしていると、
院とそれなりの役職を持った男性たちが、「院に暴力(?)を振るうなんて…これは罪科が必要だ」と会議をしています。
二条は「計画したのは私だけじゃないし、そもそもそっちがむちゃくちゃするからやん…(突然の関西弁)」と言い訳するのですが、
「影さえ踏んではいけない尊いお方を杖で打つなんて…。実行犯が一番悪い」と判決が出ます。
余興の一環としての罰なので、重いものではありませんでしたが…。
天皇に武器を向けた事件ということで、後々語り継がれます。
粥杖は江戸時代に特に流行し、現在でも地方によっては残っている風習だそうです。
宮中というと「お堅い」イメージですが、こんなお茶目な遊びもあったんですね。
ジャンル | ことば・文学 |
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掲載日時 | 2021/1/13 16:00 |
大阪府出身・在住。
同志社大学文学部国文学科卒業。
現在は予備校で(比較的)新人講師として勤務。
担当ジャンルは【古典文学】
授業では、本編よりも脱線話の方がウケて悲しい反面、過去の自分もそうだったので生徒を責められません。小ネタを収集する日々です。
基本どんなジャンルでも興味あり!
でも、結局言葉(=ことのは)のもつ魅力から逃れられずここまで来てしまいました。
尊敬する人は中2のときからロザンの宇治原さん。好きなことは、得意ジャンルが全く違う同居人とクイズ番組を見ながらやいやい言うこと。
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