『資治通鑑』的人物採用基準とは?
どんな人と働くか…それはいつの時代になっても永遠の課題のようです。
『資治通鑑』とは、1065年に司馬光が書いた中国の歴史書です。ここではどういった価値観で人物採用をすべきだと言っているのでしょうか。
本文中では、 人間の性質を4分類しています。「才(=才能・能力)」と「徳(=人徳・道徳)」の有無です。
聖人:才・徳どちらもあり
君子:才<徳
小人:才>徳
愚人:才・徳どちらもなし
聖人・君子と働くに越したことはないが、彼らの数は多くない。小人と愚人のどちらかを採用しなければならないとき、どちらがよいのだろうか?
わたしは凡人なので、せめて才だけでもあったほうがいいんじゃないか?と思うのですが、『資治通鑑』的な答えは「愚人」です。
小人は、徳はないくせにへたに才能があるがゆえに、それを悪い方に使う可能性があるからです。しかし愚人は悪いことを考え付いても、それを実行に移す能力がない。よって、愚人を採用するほうがリスクは少ない、という理屈です。
理由を聞いてしまえば納得できます。
ハイリスクハイリターンで考えるか、ローリスクローリターンで考えるか、だと思いますが、生きるか死ぬかの権力争いの中では、やはり裏切りが一番怖かったのでしょうか。
『資治通鑑』に収められているのは、周から北宋の成立までの歴史です。
周が成立したのが紀元前605年なので、約1300年間のことが書かれています。
各時代について書かれた、ばらばらに存在していた資料を一つの体系立ったものにまとめました。想像するだけでしんどそうです。
その証拠に、完成まで約19年かかり、完成時には「臣(=私)の精力、この書に尽く」と司馬光は語り、完成からわずか1年で亡くなってしまったのも納得できます。
編纂の目的は「理想の君主を示す」「部下に模範を示す」「反面教師を示す」で、下級役人にも簡単に読めるように書かれています。その目的の通り、広く読まれ、現代でも人の上に立つ人の指南書として広く読み継がれています。
ちなみに私がこの話に出会ったのは、そういった目的ではなく、早稲田大学の過去問(漢文)を扱う際の授業準備の時でした。
この文章を入試問題で出題して「小人」は求めてないぞ、と意思表示をしているように見えます。(愚人を合格させたいかはさておき…)
入試問題はその大学の先生が、入学者には読んでおいてほしい文章を選りすぐっていますので、大学の特色が出るように思います。(もちろん、他意はなく私の勝手な深読みかもしれませんが)
また、入試問題の文章は、大学で教えているようなプロが選んだおもしろい文章の一番おもしろい部分が抜粋されています。つまみ食いできることが分かった今は、自分が受験をしたときよりも楽しんで勉強できています。ぜひ、「最先端・最強効率読書(?)」を試してみてはいかがでしょうか。
ジャンル | ことば・文学 |
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掲載日時 | 2020/10/11 16:00 |
大阪府出身・在住。
同志社大学文学部国文学科卒業。
現在は予備校で(比較的)新人講師として勤務。
担当ジャンルは【古典文学】
授業では、本編よりも脱線話の方がウケて悲しい反面、過去の自分もそうだったので生徒を責められません。小ネタを収集する日々です。
基本どんなジャンルでも興味あり!
でも、結局言葉(=ことのは)のもつ魅力から逃れられずここまで来てしまいました。
尊敬する人は中2のときからロザンの宇治原さん。好きなことは、得意ジャンルが全く違う同居人とクイズ番組を見ながらやいやい言うこと。
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