関東の冷たい「アメンボー」とは?
アメンボと言えば、クイズでは比較的お馴染みの生き物だ。漢字クイズなら「水馬」や「水黽」の読みとして出題されることが多い。ちなみに、「黽」は1文字で「あおがえる」と訓読みする。また、アメンボの名の由来は「雨」ではなく「飴」で、体から飴のような匂いがするため「飴坊」や「飴棒」と書くのが元々だ。
と、まあクイズ知識をおさらいしたが、今回はそんな話ではない。方言の話だ。関東で「アメンボー」、鹿児島・愛媛・和歌山・静岡・茨城などの沿岸地域で「ビードロ」、相模や利根川流域で「トロロ」「ツルル」と呼ばれるものは何だろう?
それは、「氷柱」だ。「ツララ」は元々近畿を中心に東海~中四国で使われていた語形だが、明治新政府が西日本出身者主導だったことから共通語化した代表例と言える。古語は「タルヒ」と言い、東北地方にはその形が残っている。「垂れる氷」という意味だ。
「ビードロ」はガラスの意のポルトガル語に由来する。地理的に離れた沿岸地域に共通語彙が見られることはままあるが、これは交易による往来があった可能性が高い。有名なのは、房総半島には近畿方言の語彙が多く見られることだ。実は、「ツララ」も房総半島にも分布し、だとすると隣接地域の「トロロ」「ツルル」もその音変化と見られる。
そして、今回の主役の「アメンボー」。由来は「雨の棒」という説もあるが、「飴の棒」の方が有力らしく、広辞苑にも掲載がある。こちらは飴のような匂いがしては困るので、見た目10割の命名だ。匂いと見た目という別々の由来から、同じ名前に辿り着くのだから面白い。
なお、辞典によっては「水馬」とも「氷柱」とも異なる、第三の「飴ん棒」が載っている。それは、理髪店の入口に置いてある三色の螺旋、「サインポール」や「有平棒」と呼ばれるアレだ。
ジャンル | ことば・文学 |
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掲載日時 | 2020/8/16 16:00 |
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