『源氏物語』の作者は紫式部。○か×か?
義務教育を受けてきて、ましてクイズが好きな方なら、迷うことなくマル!と答えられるでしょう。
でも実は「本当のところ○とも×とも言い切れない」が現時点での真相です。(煮え切らない…)
もちろん大学入試までは「紫式部」と答えないとむしろ×になります。
しかし、国文学科在籍時代、「国文学の大学院入試で紫式部なんて書いたら絶対に点数やらないからな!」と言われて衝撃を受けたのを覚えています。
ではなぜ作者が紫式部と言い切れないのでしょうか。
まずは「源氏物語がどのように現代に伝わっているのか」を確認していきます。
実は、源氏物語は、現在完全な形では残っておりません。
当時は、本というかたちで出版していたわけではありませんので、
ある本を手元で置いておきたければ、
作者Aさんの原作をBさんが書き写し、さらにそれをCさんが書き写し…ということが必要でした。
例えばBさんが漢字を間違って書き写すと、Bさんのを写すCさんも間違える可能性が高いですし、
また、Bさんが「こっちの展開の方がおもしろそう♪」なんて考えて、
展開を変えたり原作には無い文章を付け加えたりすると(なんて自由なんだ…)、
書き写す人も、それを原作と思い込んで書き写すことになります。
現在残っているのはこうしてたくさんの人に書き写されたコピーだけなのです。
そして、誤字の仕方や展開の類似点で分類すると、大きく三系統の源氏物語に分類できるのです。
(この分類の仕方は研究者によって諸説あり)
源氏物語の作者が紫式部と言われるようになったのは、
『紫式部日記』に、「この日記を書いている人間が源氏物語を書いているのよ」という匂わせ記述があるからです。
よって、この時点で言えることは
紫式部=紫式部日記の作者
紫式部日記の作者=源氏物語の作者?
↓
紫式部=源氏物語の作者?
と推定されているということだけです。
紫式部という人が源氏物語を書いたという直接的な根拠はないのです。
源氏物語の文体と紫式部日記の文体が全然ちがう!だから別人が書いているはずだ!とか、
かなりの長編だし、途中で作者が変わっているんじゃないの?とかいう意見も、未だ根強く残っており、作者については諸説あるのが現状です。
この問題に決着がつく日がくるのであれば、
源氏物語の原本が発見されるか、作者を直接示す信頼性の高い文献が出てくるか、しかなさそうです。
もしかすると、国文学の院試のように、
クイズ番組でも「紫式部」が不正解になってしまう時代が来るかもしれませんね。
ジャンル | ことば・文学 |
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掲載日時 | 2020/6/28 16:00 |
大阪府出身・在住。
同志社大学文学部国文学科卒業。
現在は予備校で(比較的)新人講師として勤務。
担当ジャンルは【古典文学】
授業では、本編よりも脱線話の方がウケて悲しい反面、過去の自分もそうだったので生徒を責められません。小ネタを収集する日々です。
基本どんなジャンルでも興味あり!
でも、結局言葉(=ことのは)のもつ魅力から逃れられずここまで来てしまいました。
尊敬する人は中2のときからロザンの宇治原さん。好きなことは、得意ジャンルが全く違う同居人とクイズ番組を見ながらやいやい言うこと。
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