煮こごりの「こごり」って何?
魚や肉などのゼラチン質の煮汁が冷えて固まったものを「煮こごり」と言う。
世界にも、フレンチの「アスピック」をはじめ同様の料理がいくつか存在し、美味しさはワールドワイドと言える。
ところで、この「こごり」とはどういう意味だろう?
語源は「こく(交く)」と「こる(交る/凝る)」が合わさった動詞「ここる」らしい。
「合う/合わす」という意味の言葉を重ねることで、まとまる・固まるというニュアンスから、「こごる=凝固する」の意味になった。
現代では死語だが、「こごり」「こごる」は広辞苑にも掲載されている。
その広辞苑の意味には載っていないが、方言を紐解くと、「こごり」で特に表していた別のものがある。
「氷」である。
方言の基礎資料『日本言語地図』では、近畿中央部で「氷」を「こごり」、近畿から中国地方にかけて「凍る」を「こごる」と言うことが確認されている。
ちなみに、「こおる」の語源も「こふ(凝ふ)」と「おる(和る)」で、共に「合う/合わす」の意味だ。
「凍る」の意味の言葉は、その分布から「こおる」「しみる」→「こごる」→「いてる」の順に変化したと考えられている。
面白いのは、現代の共通語「こおる」が、上代から存在した最も古い形だということである。
これは、都から離れているために古い形が残っていた江戸が、明治に首都となり共通語の基本となったからだ。
明治政府は西日本出身者中心で、彼らの言葉も多く取り込まれたが、「凍る」は公の場での使用機会もないため土着の表現が残ったのだろう。
それに比べ、料理、特に煮こごりは宮廷との関わりが深い。
そのために京都の影響が強く、「煮こごり」という語が今日も残っていることは頷ける。
「凍る」関連で、ついでにもう一問。
北海道方言の「しばれる」とはどういう意味だろうか?
「非常に寒い」と答えた方、とても模範的です。誤答として。
本来の東北方言としての意味はそれで正しいのだが、北海道に伝わる過程で意味の変化が起こったらしい。
北海道では「凍る」の意味で使われるそうだ。
方言には不思議が詰まっている。
ジャンル | ことば・文学 |
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掲載日時 | 2020/6/18 16:00 |
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