ゴールパフォーマンスが座禅といわれるサッカー選手は誰?
サッカー観戦の上で一番の見所といえばゴールシーンだろう。また、ゴールを決めた選手のパフォーマンスも楽しみのひとつだ。
日本人なら三浦知良選手のカズダンスなどが馴染み深いに違いない。Jリーグ創生期の話でいけば、アントラーズなどで活躍した、敬虔なクリスチャンであったビスマルク選手のお祈りなども印象深い。ちなみに、これは得点ではなく、神様に日本という素晴らしい国でプレーする機会を与えてもらえたことへの感謝だったそうだ。
お祈りといえば、イングランドプレミアリーグのリヴァプールFCのサラー選手は、イスラム教徒らしく平伏礼を行っている。
キリスト教・イスラム教ときて、仏教はどうだろう。長友佑都選手はインテルでチームメイトとお辞儀ポーズを見せていたが、これは日本的な儀礼を表現したものだろう。トルコのガラタサライでもゴールを決めたチームメイトに合掌して頭を下げる姿も見せていたが、仏教儀礼の意味合いはないと思われる。
日本の大乗仏教とは少し違うものの、上座部仏教の国としてタイが挙げられる。近年はチャナティップ選手などJリーグで活躍するタイ人選手もいるが、彼らも仏教的パフォーマンスは見せていない。タイ・プレミアリーグの選手を全て見れば合掌する選手くらいはいるかもしれないが、それは少々難しいし、発見したところで詳しくわからなければあまり面白味のないネタだろう。
一方で仏教との関連が薄そうな欧州の地で、ゴール後に座禅をしていると話題の選手がいる。オーストリアのレッドブル・ザルツブルク時代は南野拓実選手の同僚で、2019年末に、かつては香川真司選手も所属したブンデスリーガの強豪チームであるボルシア・ドルトムントで活躍するアーリング・ブラウト・ハーランド(ホランドやホーランといった記載もあるが、今回はこれで統一する)選手がその人だ。
期待の若手ストライカーとしてたびたびピックアップされる選手だが、ザルツブルク時代にまだ10代ながらUEFAチャンピオンズリーグでハットトリックを記録するなど、実際に優れた得点感覚を持つFWだ。ちなみに、彼の父はノルウェー代表やイングランドプレミアリーグのマンチェスターシティーなどで活躍したDF・アルフ・インゲ・ハーランド選手だ。
そんな彼のゴールパフォーマンスだが、目を閉じてあぐらをかき、両手の甲を各膝について指を軽く開き、瞑想するというものだ。これが座禅に似ていると何度か日本のメディアでも取り上げられている。2020年のCLの際にPSGの選手がこれを真似して揶揄したのではという報道もあったので、記憶に新しい方もいるだろう。
しかし、これは我々日本人がイメージする座禅とは少し異なる。日本の禅寺で見られるものとは手の位置や足の組み方が違うのは見ればすぐにわかるだろう。
これにはマインドフルネスというものが深く関連しているようだ。そのルーツは仏教の経典にある“smṛti(スムルティ、パーリ語でサティとも)”とされ、「心をとどめておくこと」などと解釈される。
瞑想を行うことで身体の五感に意識を集中させ、先入観などにとらわれず、現在の気持ちや状況をそのまま受け入れる心を育てる訓練とするものだ。
日本の企業でも研修にこれを導入するところも増えているというが、欧米の有名企業でも積極的にこれを取り入れているところが既にあり、ちょっとしたブームにもなったという。
ハーランド選手は自らの信仰について明言していないが、「瞑想が大好き」ということはインタビューで答えている。我の強いストライカー的な意識もFWには大切だろうが、心を落ち着かせて冷静でいることも、状況判断などにおいては重要なのかもしれない。
なお、21世紀初め頃、かつての共産圏であった東欧諸国ではそれまで絶対的だった思想が崩れたため、仏教などこれまでヨーロッパに馴染みの薄かったものが人気だと聞いたことがある。我々のイメージする座禅パフォーマンスをするのは移籍した日本人選手ではなく、チェコやポーランドの選手かもしれない。
ジャンル | スポーツ |
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掲載日時 | 2020/11/18 16:00 |
学習院大学文学部史学科卒
大正大学大学院仏教学研究科浄土学専攻修士課程修了
高校・大学は剣道部、前職は中学・高校の社会科教員。クイズ作家としてはクイズ研究会やサークル所属経験のない異色の経歴。クイズ番組は好きだったが、プレイヤーとしての経験はアーケードゲームのみ。
僧侶としても、仏教系大学に大学院のみ在籍という極少数派。
有限会社セブンワンダーズ入社後は僧侶とクイズ作家の兼業で活動。法話にもクイズ作成で得た知識や要素を取り入れ、独自性のあるものを展開しているほか、寺院での「仏教クイズ」も企画している。
好きなジャンルは仏教、世界史、サッカー。
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