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御朱印とは元々何のためのもの?

 今となっては寺社に疎い人でも御朱印は知っているだろう。テレビなどのメディアで取り上げられることも少なくないし、老若男女問わずコレクションしている方も多い。

確かに旅行などの記念にもなるし、見事な字体のほか、最近は彩りが鮮やかだったり、イラスト入りだったりと、見た目にも楽しいものが多い。中にはコラボレーションや特定の月日限定といった、コレクター心を攻めるものもある。

私が住職を務める寺でもこれまではやっていなかったが、一部要望などもあり、2020年9月中旬よりスタートした。彼岸参りの方にも何件か書かせてもらった。

この御朱印、スタンプラリーのようなものと認識している方もいるだろうが、実際はどのようなルーツを持つものか、それを今回のテーマとしたい。

 

御朱印の起源については確定していないが、有力な説を見ると鎌倉時代か室町時代といわれ、「六十六部廻国聖(ろくじゅうろくぶかいこくひじり)」という、全国66箇所の霊場(国分寺など)を巡り、それぞれに1部ずつ書写した『法華経(妙法蓮華経)』を納めた行者に由来するといわれる。この行者が納経したという証明がこの印だったとされる。この経典については他にも浄土教系のものなども見られる。

ちなみに、神社本庁のサイトでは奈良・平安時代に納経を行った際の「納経受取の書付」がルーツではないかと紹介されている。いずれにしろ、納経がキーとなっている。

しかし、当時は当然コピーなどなく全て筆写であり、『法華経』も「六万九千三八四(ろくまんくせんさんばっし)」といわれ、原稿用紙でいえば170枚以上が必要な量だ。そのためこれは全国を巡ることも含め、大変な行であったといえるだろう。そのためか、写経ではなく木などで作られた「納経札」というもののみを納めるケースもあったようだ。こうした事例を見ると納経より巡礼のほうに重点が置かれていた印象も受ける。

また、ここだけ見ると寺院がルーツといわれるがそういうわけでもない。神社に納経を行うということは、平清盛の『平家納経』を見ればわかるだろう。当時は神仏習合思想もあり、我々現代人の感覚と少し違うところもある。

 

話が少々逸れそうなので戻すと、写経、もしくはそれに類する・代替するものを納めた証明だったものは、やがてそれらを伴わなくても受けられるようになった。

江戸時代に入ると「お蔭参り」の言葉でもわかるように民衆の寺社参拝も一般的になった。そして、次第に参拝の証としての印をもらうことも一般的になった。

さらに、明治時代になると鉄道の誕生により、巡拝旅行およびそれに伴う集印は今まで以上に広がりを見せ、昭和初期頃から現在認識しているような「御朱印」という言葉も使われるようになる。

やがて、2010年代に入るころにパワースポットなどの言葉が見られるようになり、それに伴ってか現在のような流れになっているのは周知の通りだ。

 

内容に変遷はあるが、御朱印帳は神仏との結縁にあたる大切なものだ。近年、集めていた方の没後の処理をどうしたらいいかという相談が多い。その場合は預かって浄焚しているが、葬儀の際に棺へ入れてあげても問題ない。受け継いで使っていいかという声もあるが、これも問題ない。引き続き、神仏との縁を増やすことは決して悪いことではないだろう。

 

以下は御朱印をもらう上でのちょっとしたポイントを記しておきたい。

①中には現在も納経などを必須としている寺院などもある。また、このご時世、寺社の注意事項なども多くなっている。郷に入っては郷に従うではないが、事前にそれらをチェックしておくことは重要だ。

②納経は必須ではないとしても、ルーツは参拝の要素も大きい。当然ながら注意事項を守りつつ境内を回ること、これも必須項目といえるだろう。また、教義についても大まかでいいので把握し、本尊や本堂前で浄土教系なら南無阿弥陀仏、日蓮宗なら南無妙法蓮華経などをぜひ称えていただきたい。

③大きな寺社は専用の職員がいるので問題ないが、明らかに家族のみの小規模なところだ

と、彼岸や年末年始といった時期の対応は難しい。法要直前に来られても同様だ。そうした時期に巡るのは大規模寺社のほうが適切だろう。檀信徒対応をしている中に割って入るようなことは避けた方が望ましい。

④これは祈願料などにもいえることだが、納める額をきっちり用意することも重要だ。これはおつりを用意するのが面倒ということではない。寺社に納めるものはひいては神仏に納めるものにあたる。その一部を返せというのは良いこととはいえない。複数の寺社を巡る予定ならば、小銭を多めに用意しておくといいだろう。

 

マナーなどが取り沙汰されることも多いが、個人的には寺社に関心を持ってもらうことは非常に良いことと思っているので、ちょっとしたことを心がけつつ、ぜひ巡礼の旅を楽しんでもらいたい次第だ。

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浄土宗 願生寺 住職/有限会社 セブンワンダーズ所属 クイズクリエーター
遠藤和成

学習院大学文学部史学科卒

大正大学大学院仏教学研究科浄土学専攻修士課程修了

高校・大学は剣道部、前職は中学・高校の社会科教員。クイズ作家としてはクイズ研究会やサークル所属経験のない異色の経歴。クイズ番組は好きだったが、プレイヤーとしての経験はアーケードゲームのみ。

僧侶としても、仏教系大学に大学院のみ在籍という極少数派。

有限会社セブンワンダーズ入社後は僧侶とクイズ作家の兼業で活動。法話にもクイズ作成で得た知識や要素を取り入れ、独自性のあるものを展開しているほか、寺院での「仏教クイズ」も企画している。

好きなジャンルは仏教、世界史、サッカー。

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