精進料理は原義でいうと「○○な料理」
精進料理といえば肉や魚といった動物性タンパク質を使わない料理というのは誰でも知っているだろう。法要などの後に食べるのも一般的だ。
近年は日本でもヴィーガンが増えていることもあり、今まで以上の需要がありそうだ。アメリカでもそうした人に向けの、豆腐で七面鳥の見た目・味を再現した「トーファーキー」なる料理があるそうだ。
今回はこの「精進」という言葉をテーマにしたいと思う。
この言葉、おそらく辞書を引かずとも「努力すること」くらいで認識している方もいるだろう。もしくは、この料理のほうに引かれて「身を清める」という意味を想定してもおかしいことはない。これは双方とも正解である。
もう少し深く見ていくと、精進はサンスクリット語の“vīrya(ヴィールヤ、もしくはヴィーリャ)”の訳である。この言葉は「毘梨耶」や「毘離耶」といった音を当てて表記することもあるが、「勇猛」などの訳があてられることもある。それもそのはず、これは「勇敢である」という意味の言葉から派生したものだからだ。
なぜこのような言葉が当てられているかというと、「仏教の修行を勇敢に実践し続けること」がこの精進の原義であるためだ。
そこから転じて、世俗を捨て仏教の修行に入ること、一定期間飲食や行いについて制限を加えること、心身を清めて肉食を避けること、動物性のものを食べず菜食することといった、現代の辞書で見られるような使い方をされるようになった。それがさらに拡大され、ひたすらに努力すること、行いを正すことなども加わり、非常に広い意味を持つ言葉となった。
そして、この精進は以前に彼岸のところで触れた仏教の修行「六波羅蜜」などの徳目にも数えられており、仏教において重要なもののひとつでもあるのだ。
葬儀後の食事のことを「精進落とし」というのも多くの人はご存知だろう。これは元々、親族などが亡くなった場合に、一定期間(四十九日まで)身を清めたり、故人の往生を願うため肉食を絶ったのだが、それが明けた際の肉や魚を含んだ食事のことを指した。
これが生活・習慣の変化や負担軽減のため次第に初七日の後、初七日が葬儀当日や葬儀に繰り込みで行われるようになり、葬儀の後という形に変化していった。
現代の精進落としはちょっとした肉や刺身、エビの天麩羅などが入っていることもあるが、上記のような理由から特に問題はない。近年、仕出しを請け負っている業者の中には故人の好きだったものをメニューに入れてくれるところもある。その際、肉好きだった人をしのぶのに肉料理を入れることは咎められることではないので、リクエストしてもいいだろう。
なお、かつては精進固めといい、この精進入りの前に肉や魚を食べておく風習があったという。1月強のベジタリアン生活は前の時代の人にとっても大変だったようだ。
ジャンル | 社会 |
---|---|
掲載日時 | 2020/12/20 16:00 |
学習院大学文学部史学科卒
大正大学大学院仏教学研究科浄土学専攻修士課程修了
高校・大学は剣道部、前職は中学・高校の社会科教員。クイズ作家としてはクイズ研究会やサークル所属経験のない異色の経歴。クイズ番組は好きだったが、プレイヤーとしての経験はアーケードゲームのみ。
僧侶としても、仏教系大学に大学院のみ在籍という極少数派。
有限会社セブンワンダーズ入社後は僧侶とクイズ作家の兼業で活動。法話にもクイズ作成で得た知識や要素を取り入れ、独自性のあるものを展開しているほか、寺院での「仏教クイズ」も企画している。
好きなジャンルは仏教、世界史、サッカー。
クイズに関するニュースやコラムの他、
クイズ「十種競技」を毎日配信しています。
クイズ好きの方はTwitterでフォローをお願いします。
Follow @quizbang_qbik