仏像の手足の指の人間と違う部分とは何?
多くの方は修学旅行などで寺院を巡った経験はお持ちだろうが、仏像の細部まで注目している方は少ないのではないだろうか。
仏には32の優れた身体的特徴があるとされ(三十二相、経典によっては順序などに差異あり)、中には「声が大きく美しい」という「梵声相(ぼんじょうそう」のような像で表現できないものもあるが、仏像は基本的にそれらの特徴を踏まえて作られている。
さらに、その三十二相に付随した軽微な特徴を示したものは「八十種好(はちじっしこう、八十随形好などともいう)」といい、仏像は100を超える特徴を持つ。
ぱっと見てわかりやすいものとしては、眉間にある「白毫相(びゃくごうそう、白毛相などともいう)」が挙げられる。この部分は浮き彫りになっていたり、水晶などがはめられているが、その正体はとてつもなく長い右回りに巻かれている白い毛で、説法などの際にはここから光を放ち、遍く世界を照らすといわれる。
手足だけで見ても複数の特徴がある。たとえば、手足に法輪の模様が現れる「足下二輪相(そくげにりんそう)」。これは特殊ではあるが、指についてとは言い切れない。指についてはしなやかで長いという「長指相(ちょうしそう)」というものがあるが、これも仏像ならではとは言いがたい。他にも直立したまま手が膝に届く、足の甲の形が良いといったものなどが挙げられるが、人間にあり得ないものではない。『三国志』でおなじみの劉備玄徳は立ったまま手が膝より下に届くという記述があり、これが事実なら仏の相の持ち主である。
その中で人間と決定的な違いを持つ指の特徴は何かというと、手足の指の間に水かきのような膜があること、このような形状を備えている人間はおそらく存在しないであろう。
これは「手足指縵網相(しゅそくしまんもうそう)」といわれるもので、「世の中の衆生をもらさず救う」という意味を持つとされる。特に日本の仏教は大乗仏教であり、広く衆生を救うということは重要なポイントといえる。
これは奈良の大仏などにも見られるものなので、拝観の機会があれば確認してみてはいかがだろうか。
ちなみに、これらの身体的特徴は人間離れしているといえばその通りである。同様のことを思った人は当然いたようで、紀元前2世紀中頃にインド西北部を支配したギリシア系の王・メナンドロス(ミリンダ)1世がそのことについて疑問を持っているが、ナーガセーナという僧の対談において説き伏せられている。そのくだりは『ミリンダ王の問い(那先比丘経)』という問答形式の経典に見られる。この経典は解説付きの書籍が少々値は張るが販売されており、仏教理解にも優れたものなので、興味があれば一読をお勧めしたい。
ジャンル | 社会 |
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掲載日時 | 2020/3/19 16:00 |
学習院大学文学部史学科卒
大正大学大学院仏教学研究科浄土学専攻修士課程修了
高校・大学は剣道部、前職は中学・高校の社会科教員。クイズ作家としてはクイズ研究会やサークル所属経験のない異色の経歴。クイズ番組は好きだったが、プレイヤーとしての経験はアーケードゲームのみ。
僧侶としても、仏教系大学に大学院のみ在籍という極少数派。
有限会社セブンワンダーズ入社後は僧侶とクイズ作家の兼業で活動。法話にもクイズ作成で得た知識や要素を取り入れ、独自性のあるものを展開しているほか、寺院での「仏教クイズ」も企画している。
好きなジャンルは仏教、世界史、サッカー。
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