平安時代の女性に必須だった教養とは?
現代を生きていく上での必要なスキルは多様化していて、一口に言うのは難しいですね。
しかし、平安時代、女性が宮中を生き抜くための必須の教養はある程度明確化されていました。
『枕草子』の内容から「デキる」女性に必須の教養を紹介していきます。
「デキる」女性として紹介するのは「宣耀殿の女御」という人。
外見も中身も優れた女性だったようです。
宣耀殿の女御の父は、娘を立派な女性に育てるためにこう言います。
「第一には習字を。
第二には(難しくてあまり弾く人がいない)お琴を、人より上手に弾こうと思いなさい。
最後には古今和歌集の二十巻すべてを暗記することを目標に勉強しなさい。」
この3つは女性が恋愛を有利に進めるために必要なスキルでもありました。
まず、ある程度身分がある女性は人前に顔を出すことはほとんどありません。「会う」ことができない状態でなんとか存在を知ってもらい、好意を持ってもらわなければなりません。
まずは楽器。
夜、家の前を通りかかった男がとても上手に弾いている楽器の音色を聞いて、弾き手の女性に恋に落ちるのは超・王道パターンです。
次は和歌。
顔が見えない分、手紙から受ける印象もとても大切。
字がキレイか、バランスよく書けるかで、男の興味の度合いも変わってきます。
そして和歌の内容。
和歌はイチから創作することもあれば、昔に詠まれた有名な和歌をベースとすることもありました。
特に『古今和歌集』は当時の和歌の手本とされており、暗記しておけば自分で和歌を作る時の参考にできます。
相手も、参考にした和歌を知っていれば「教養もある人なのだ」とますます興味を持つようになります。
「習字・琴・和歌」は恋愛をうまく進めるスキルでもあったのです。
紹介した宣耀殿の女御は、父の言いつけどおりにスキルを身に着け、天皇に嫁ぎました。
そこですさまじい逸話を残しています。
ある日、天皇が暇つぶしに『古今和歌集』全20巻を持って宣耀殿の女御のもとを訪れます。
カーテンのようなものを隔てて、天皇は「いつ、どのような場面で、○○さんが詠んだ和歌はなにか」と問題を出し、宣耀殿の女御に答えさせます。
天皇は「どこかでまちがったら終わりにしよう」くらいの軽い気持ちでのお遊びのつもりだったようなのですが、女御は答え続けます。
結局10巻まで来てしまいます。(半分!)
「全く無駄なことだった」と天皇は諦め、就寝されました。
起きたあと「勝負がつかないままなのはよくない」と思い、残りの十巻も同じように試したのですが、女御は結局一カ所も間違えることなく答えきったのでした。
本当に『古今和歌集』1111首をすべて暗記していたらしいのです。
(すごい…)
昔は「女性の成功」が男性や環境に左右されていました。
とはいえ、自分でコントロールできることには全力を尽くすのが今も昔も「デキる」女性なのかもしれません。
ジャンル | 歴史 |
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掲載日時 | 2021/11/10 16:00 |
大阪府出身・在住。
同志社大学文学部国文学科卒業。
現在は予備校で(比較的)新人講師として勤務。
担当ジャンルは【古典文学】
授業では、本編よりも脱線話の方がウケて悲しい反面、過去の自分もそうだったので生徒を責められません。小ネタを収集する日々です。
基本どんなジャンルでも興味あり!
でも、結局言葉(=ことのは)のもつ魅力から逃れられずここまで来てしまいました。
尊敬する人は中2のときからロザンの宇治原さん。好きなことは、得意ジャンルが全く違う同居人とクイズ番組を見ながらやいやい言うこと。
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