甲骨文字って何に使われていたの?
甲骨文字。
世界史を履修した方であれば避けては通れない単語ですし、
クイズ好きの方であれば「中国最古の文字」という特徴と一緒にご存じかもしれません。
『広辞苑』の「甲骨文字」の項目を参照すると、
「亀甲・獣骨などに刻まれた中国最古の体系文字。卜占の記録を刻したもので、殷代に多く…(以下略)」とあります。
骨に文字を刻みこむため、彫るのにも一苦労。
よって甲骨文字には直線的で簡単なつくりが多いです。
しかしいくら簡単だと言っても、漢字と共通する部分が多く、漢字のルーツと考えられています。
甲骨文字は、人間同士の意志疎通のためというよりも、占いに利用し、神との通信手段として使われました。
・亀の甲羅の場合
①亀の甲羅のお腹側の中心に縦に線を引き、その左右に肯定文と否定文の形で相反する二つのお告げを書く。
ex)
(左:否定文)今日の夕飯はカレーにすべきでないか? (右:肯定文)今日の夕飯はカレーにすべきか?
②火で甲羅をあぶる。
③割れ目が入った方を神からのお告げとして実行する。
カメの甲羅の場合は、この左右対称の形を生かして「すべきか?すべきでないか?」を判断するときに使われました。
・動物の骨を使う場合
①お告げが欲しい事柄を骨に刻み、火であぶる。
②カタカナの「ト」のような模様が出れば「吉兆」(実行してよし)のお告げだと解釈する。
よって、「卜占」の「卜」が占いを意味する漢字になったのはここから来ています。
こんな風にして、殷は神様にお告げをもらい、それを実行していくという形で政治を進めていたのですが、どうやら、甲羅や骨にうまいことヒビを入れておいて、自分たちの望む結果が出るように細工をしていたようです。
その証拠に、望む結果が出なかった時は、
「では、いけにえとして、牛を○○頭捧げます。これでいいですか?」的なことを追記してもう一度占っていた形跡も見つかっています。
そして少し本筋からは脱線しますが…
甲骨文字は殷代の中国最古の文字ですが、中国で一番古い王朝は「夏」ではないの?と思った博識な方がいらっしゃるかもしれません。
夏王朝は殷のさらに前の王朝で、遺跡らしきものが発見され、「あったらしい」ということが徐々に明らかになってきています。
しかし、大学で文学を勉強してきた私の立場からは夏王朝は「なかった」と言わなければなりません。なぜなら「文字史料」が発見されないからです。
文学はあくまで文字史料を相手にしますので、極端に言うと「夏王朝で使われていた文字」が発見されないと夏王朝があったとは言えないのです。
ここが、遺跡らしきものが出てきた時点で「あっただろう」と言える歴史学とは違うところです。
今回は「文学作品」を扱ったものではありませんが、文学の基礎となる文字の扱い方・文学の考え方をお伝えできているとうれしいです。
ジャンル | 歴史 |
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掲載日時 | 2021/2/5 16:00 |
大阪府出身・在住。
同志社大学文学部国文学科卒業。
現在は予備校で(比較的)新人講師として勤務。
担当ジャンルは【古典文学】
授業では、本編よりも脱線話の方がウケて悲しい反面、過去の自分もそうだったので生徒を責められません。小ネタを収集する日々です。
基本どんなジャンルでも興味あり!
でも、結局言葉(=ことのは)のもつ魅力から逃れられずここまで来てしまいました。
尊敬する人は中2のときからロザンの宇治原さん。好きなことは、得意ジャンルが全く違う同居人とクイズ番組を見ながらやいやい言うこと。
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