イギリス料理が“不味かった”のはなぜ?
「世界一料理の不味い国イギリス」という評判は多くの人が聞いたことあるだろう。そして、この悪評はここ20年で改善されてきているという話も耳にしたことがあるのではないだろうか。
日本でも、英国風居酒屋のパブや、研究が進みより洗練されたモダン・ブリティッシュ料理を提供する高級店が増加しており、その一端を楽しむことができる。
では、何故イギリス料理は“不味かった”のだろうか。
そもそもイギリスではランカシャーホットポットなどのシチュー(煮込み料理)、キドニーパイやミートパイなどのパイ、ヨークシャープディングに代表されるプティング類、ローストビーフなどの美味しい伝統料理は存在している。
だが、隣国フランスの料理のように手が込んでいるわけではなく、ただ素材を焼いたり煮込んだりしただけの素朴なものが多い。素材の味を生かすといえば聞こえはいいが、国土が北海道よりも北に位置するイギリスでは農業も安定せず、常に質の良い食材が手に入るとも限らなかったため、最初から味を諦めてレシピ研究は進まなかったようだ。
17世紀以降は植民地支配が進み、インドや中国の料理人を雇い入れたことでイギリス料理は徐々に廃れていく。
何より決定的だったのが、18世紀の産業革命である。職を求め多くの人間がロンドンに進出したが、劣悪な労働環境ではまともに食事を作ることもできない。また衛生学の考えが広まりつつあったこともあり、とりあえず食べ物は煮るか焼く、しかも殺菌のために味がしなくなったり黒焦げになったりするまでという有様になってしまった。
その結果としてイギリスの庶民の間では調理という文化が失われ、「イギリス料理は不味い」という風潮が出来上がったのだ。
その後、「美食」、つまり食を楽しむ文化が国内に輸入されティータイム以外の食事にも目が向けられるようになり、徐々に改善されて来たのが今のイギリスなのである。
ジャンル | 歴史 |
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掲載日時 | 2020/3/9 16:00 |
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