よみもの|雑学記事|エンタメ・カルチャー

あやかし、もののけ、ホントにいるの?
~山+女+老人=???~

地球・あやかし紀行

不思議な現象、幽霊、妖怪、未確認生物をまとめて、親しみやすく“あやかしさん”と呼び、様々な“あやかしさん”情報を紹介しています。

今回の“あやかしさん”は「山姥(やまんば)」。ガングロに白い口紅、鮮やかな髪に目の下にはラインストーン…21世紀初頭、都会に急増し大旋風を巻き起こしたコギャルたちではありません。日本に伝わる妖怪の「山姥」を紹介しましょう。

佐脇嵩之『百怪図巻』「山うは」

山姥は「やまんば」「やまうば」と呼ばれ、山奥に暮らす老女の姿の妖怪です。背は高く白髪の長い髪に鋭い眼光、耳まで裂けた大きな口。山道で人や家畜を待ち受けています。日本各地に伝承が残り、その多くの物語で山姥に遭遇するのは旅人や商人など。

若い女性の姿の山姥もいて、こちらは山女、山姫と呼ばれています。

 

山姥が登場する「食わず女房」「牛方と山姥」などの民話では、山姥は人や家畜を襲って食べる恐ろしい妖怪です。

【化ける→遭遇→襲う→捕獲→食べる】が山姥の基本的なルーティーン。

中には余計な手間は省略し山道を猛スピードで追いかけてきて、人間を生け捕りにする“速攻捕獲型”や襲う前に謎かけや知恵比べを仕掛けてくる“クイズ選手権型”も存在。どちらにせよ、とんでもない人食い鬼ババです。

ところが、一部で山姥は可哀相な子どもに恵みを与え貧しい人に福を与え、山姥が住む家は栄えると言った座敷童ならぬ“座敷婆”という幸運の女神的な逸話もあります。

 

山姥は口減らしのために山に捨てられて老婆、攫われ山に捨てられ殺された娘たち、また、山に籠り山神に仕える巫女が時を経て妖怪となったと言われています。

 

山姥のキーワードは「山」と「女」と「老人」。

「山」は不思議な力があるといいます。天候や自然現象も予想できず、時に激しく命をも奪い、時に優しく人々を癒し様々な奇跡を起こします。そして荒々しい中でも多くの生物の命を育んでいます。生命にとって善か悪か?掴みどころがありません。そんな不思議な山の魔力を以てしてなら、無念を抱え山に消えた多くの命が新たな生を受け、生き続けていたとしても不思議はありません。

「女性」は、働きながらも命がけで子を産み、時には厳しく時には優しく子を慈しみ守り育て上げ老いていきます。それが昔の一般的な女性(母)の生き方でもありました。男性には体験出来ない困難や痛みを乗り越えるパワーを秘めた女たち。女性も山と同様に厳しさと優しさを兼ね備えた命を育むパワフルな生き物といえます。

「老人」は歳を追うごとに弱く小さく儚げになり、ゆっくり死へ近づいていきます。

老人はそんな外見とは裏腹にいざと言うとき、豊富な知識と経験で人々の窮地を救う恐るべきパワーを発揮。そんな力がどこに?と驚かされます。

どんなに美しい女性も、どんなに頼もしいイケメンも、有り余る富を得た人でも、皆平等に“老いと死”はやってきます。それが逃れようのない生き物のさだめ。

 

「山」と「女」と「老人」この3つの性質が山姥にはしっかりと刻まれています。

山に住む不思議なパワーを持つ老女、それが山を代表する山姥という妖怪です。

山姥に恐怖と優しさの両局面の逸話が残るのは山姥が元は“人”であった証なのかもしれませんね。

神聖で掴みどころのない山への畏怖と、底知れない女や老人の不思議な人間パワー、そして山に消えた人への想いが混じり合い、いつしか “山の戒め”として妖怪・山姥が生み出されたのかもしれません。

 

ちなみに…婆がいるなら爺も。「山爺(やまじじい)」「山父(やまちち)」もいます。

背が小さく全身灰色の体毛に覆われ、目が1つ、声が異常にデカい、狩猟に優れどんな獣も骨までバリバリ食べる、いかにも妖怪らしい特徴。けれど人を襲う事はなく、読心術を持っているワリには意外と人に騙されやすい。そのため猟師たちは山爺を餌で手懐け狩りに役に立てるなんて話も…人間に利用されるビミョー残念妖怪です。

老人とはいえ元気で俊敏!食欲旺盛なところは山姥との共通点です。

 

東北から九州まで多くの伝承がある「山姥」。こんなに多くの伝承があるのですから、実際には存在しないとは言い切れません。山では山姥に気を付けましょう。

一方、以前都会に出没したヤマンバと言われた娘たちの多くは、今では妖怪・山姥とは逆ですっかり毒が抜け若返り、強く優しく逞しく育てるお頼もしい母さんです。

この記事が気に入ったらシェア!
このエントリーをはてなブックマークに追加
放送作家 キャスティングプロデューサー
南鰻衣ルカ

本業はTV番組・イベントなどキャスティングP

音楽業界、芸能界、TV・ラジオ・イベント業界などを経て、現在に至る。

仕事の中で知り合った多くの人から不思議な話をたくさん聞き、不思議な事に

巡り合ううちに“不思議なモノ”や“目に見えぬものが”大好物に!

それらを伝えていこうと執筆している。

得意ジャンルは神話、伝承、歴史、天文、色彩、スピリチュアル、どうでもいい雑学。

趣味はイラストレーション、読書。

クイズに関するニュースやコラムの他、
クイズ「十種競技」を毎日配信しています。
クイズ好きの方はTwitterでフォローをお願いします。

星空散歩~夜空の地図と星々の記憶~ vol.08【いて座】

星空散歩~夜空の地図と星々の記憶~ vol.07【へびつかい座】

さそり座

星空散歩~夜空の地図と星々の記憶~ vol.06【さそり座】

あやかし、もののけ、ホントにいるの?~百鬼夜行・あやかし達の大パレード~

てんびん座

星空散歩~夜空の地図と星々の記憶~ vol.05【てんびん座】

あやかし、もののけ、ホントにいるの?~未確認生物・ネッシーはどこに?!~

乙女座

星空散歩~夜空の地図と星々の記憶~ vol.04【おとめ座】

日本アカデミー賞で、史上最多の13部門で最優秀賞を受賞した映画とは?

あやかし、もののけ、ホントにいるの?~お盆とお彼岸、あやかしは現れやすいのか?~

あやかし、もののけ、ホントにいるの?~鬼か天女か人間か?謎の美女・鈴鹿御前~

星空散歩~夜空の地図と星々の記憶~ vol.03【しし座】

星空散歩~夜空の地図と星々の記憶~ vol.02【夏の大三角 天の川に浮かぶ琴と鷲と白鳥】

星空散歩~夜空の地図と星々の記憶~ vol.01【蟹座】

あやかし、もののけ、ホントにいるの?~都市伝説・トイレの花子さん~

『木花咲耶姫』大神ゼウス君の世界神話教室 女神のコトならワシに聞け! 第17話

怖い雑学【聞くトリビア 読む編part.20】

閲覧数:
540views

お菓子の雑学【聞くトリビア第18話 読む編】

閲覧数:
390views
十二単

平安時代の女性に必須だった教養とは?

閲覧数:
280views

「人生の糧になる名言」100選【偉人たちの名言雑学集】

閲覧数:
270views
野球

「金は出すけど口は出さない」と最初に語ったオーナーは?

閲覧数:
240views
十二単

平安時代の人にとっての夢ってどんなもの?

閲覧数:
210views

モミジDr.のリカバリー日記 第325回「西田敏行」

モミジDr.のリカバリー日記

閲覧数:
210views

結婚の雑学【聞くトリビア第30話 読む編】

閲覧数:
200views

モミジDr.のリカバリー日記 第326回「紙」

モミジDr.のリカバリー日記

閲覧数:
180views

違いの分かる雑学【聞くトリビア 読む編part.21】

閲覧数:
150views
傘応援

ヤクルト名物「傘振り応援」が始まった経緯とは?

閲覧数:
130views

モミジDr.のリカバリー日記 第327回「ボウリング」

モミジDr.のリカバリー日記

閲覧数:
130views
十二単

平安時代ってどんな布団で寝ていたの?

閲覧数:
120views

『西遊記』で三蔵法師の乗っている馬は何者?

閲覧数:
120views

時間の雑学【聞くトリビア第29話 読む編】

閲覧数:
120views
Share
このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP