あやかし、もののけ、ホントにいるの？
～枕を返して何が楽しい？妖怪枕返し～

不思議な現象、幽霊、妖怪、未確認生物をまとめて、親しみやすく“あやかしさん”と呼び、様々な“あやかしさん”情報を紹介しています。

今回の“あやかしさん”は最近バラエティ番組のパロディでも登場する「枕返し」

伝承の枕返しって本当はどんな妖怪なんでしょう？

では枕返しついてご紹介しましょう

夜中に寝ている人の枕元にそっと現れ、ひょいと枕を返して楽しむ「枕返し」。

現代の私たちから考えると何が楽しい？枕をひっくり返されても別に…と思いますね。

ホントに枕返しの行動の意味がわかりません。意味のない悪戯をするこの妖怪、残念な妖怪のように思えますが、実は日本の風習にまつわるちょっとコワイ訳があります。

枕返しのPROFILE

＊夜中に現れ枕をひっくり返す

＊頭と足の向きを変える（向きを逆にする）

＊稀に布団の向きごと変える

＊その姿は子ども、もしくは僧侶や小鬼

＊身長は約3寸（１m弱）と小柄

 

「で？」と突っ込みたくなりますが、寝相が悪い人の無意識の行動でも、いにしえのドッキリ企画でもありません。枕返しのこの行動は単純に妖怪の無駄なイタズラと伝わることも多いですが、実は枕返しをされた人は死に至るというコワイ逸話があります。そう、枕返しは命を奪いに来る恐ろしい妖怪ともいえるのです。

枕返しは日本全国に伝説がありますが、その正体も各地で異なっています。

東北地方では“座敷わらし”の仕業、または神仏の仕業

北関東では化け猫の仕業

東海では“枕小僧”とも言われ小妖怪の仕業

近畿では木の精霊の祟り

このように枕返しの正体についても所説あり、その部屋で亡くなった子どもの霊、またこの部屋で殺され金品を奪われた旅人の霊、座敷童、精霊、また狸や狐など化かす生き物とも言われていますが、どれにせよ“あやかしさん”に間違いありません。

起こる現象も共通して「枕を返す」「枕の位置が変わる」など寝た時と違う状態にされる事。キーワードは「枕」です。

枕には死と密接な…日本の風習が深く関わっています。

今では住宅事情や風水など北枕で睡眠をとる、という事は珍しくありませんが、昔の人は北に頭を向ける“北枕”基本的には亡くなった人を安置させる時だけ。ですので寝ている間に枕を北に向けられることは使者の国へ行くということなのです。

民俗学でも枕には深い意味があり、寝ている間は現世と別の世界に行っている時。夢は魂が肉体を離れ幽界に行っている時間と思われていたのです。

さらに枕は使っている人の魂が宿っているともいわれ、寝ている状態から枕だけ移動させると、夢の世界に行っている魂が起床時に無事に戻って来られないのです。枕を変えられる、ましてや枕返しによって北枕にされた暁には…残念ながら、もう無事ではいられません。あちらの世界に行くしかないのDeath!

 

枕は現世に生きる人間の魂があの世を旅して無事に戻ってくるための依り代です。

亡くなった方への最初のお経は「枕教」、お箸を刺して供えるご飯は「枕飯」、葬儀の際に祭壇に飾るモノ一式を「枕飾り」いいます。そして「北枕」に寝かせる事は、この世とあの世の境目の意味もあるのでしょう。

また、枕には使用する人が信仰している神が宿り「枕神」として占いや願掛けの為にも使われました。願いを叶えるも、あの世に連れて行くのも枕神のご機嫌次第。枕返しは枕神の化身なのかもしれません。

 

単なる悪戯妖怪と思いきや…枕１つで死へ導く意外とコワイ“枕返し”は侮れません。

あの世からの水先案内人ともいえます。

 

では、寝相が悪い人はどうかというと…それはまた別の話。コワイと思ったら枕を固定して眠って下さい。修学旅行で枕投げ、枕で遊んでボロボロにするなんて…先生よりコワイ！きっと枕神に祟られます。

今夜、ふと目が覚めて、妙な姿の生き物がアナタの枕に手を触れていたら…ドッキリではありませんよ！すぐに枕を護りましょう。