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あやかし、もののけ、ホントにいるの?
<人魚編 その3>

地球・あやかし紀行

(〈人魚編 その2〉はこちら)

 

不思議な現象、幽霊、妖怪、未確認生物をまとめて、親しみやすく“あやかしさん”と呼び、様々な“あやかしさん”情報を紹介しています。

まことしやかな言い伝えには、必ず時代を問わず人の心に響く教えが込められています。今回は人魚その3、人魚を食べて800年生きてしまった、という女性のお話。

八尾比丘尼。彼女のお話は現在の福井県から始まり、北関東一帯に広がっています。

 

<八尾比丘尼(ヤオビクニ)・お里>

お里の父ちゃんは、知人に食事に招待された際、厨房で奇妙な魚を目撃します。

「わっちゃ~!なんだ?あれ、まさか人魚?!キショ!」

その奇妙な魚は顔がヒト、身体が魚。絶対フツーのモノではありません。

帰り際、家主から「これ、お土産。不老長寿の秘薬。誰にも秘密だぞ、ヒヒヒッ」と謎の包みを持たされました。

父ちゃんは「こりゃ、ヤバいものだ」と思いつつも、夜も遅かったので台所に放置し休みました。空腹で目が覚めた、若く食べ盛りの娘のお里は台所へ行くと妙な包みが…。

「ラッキー!なんか超美味しそうじゃん!」とペロっと食べてしまいます。

翌朝、父ちゃんは起きてビックリ!

「おめ~まさか、アレ食ったか?アレは食っちゃいかんモノだぁ~!」

こうして、お里の長い長すぎる、人生が始まります。

 

美しく成長したお里も結婚し月日が流れます。旦那は老いて亡くなりますがベッピンさんのお里は幾度も再婚を繰り返し、気が付けば200年!けれど、お里の容姿は変わりません。あの夜に食べた、アレのせいに違いありません。

「いいじゃん!超イケてる~♪」と最初はまんざらでもなかったお里ですが、親兄弟、友人知人が、さらには赤子が老婆になり、この世を去っても…ずっとギャルの風貌のままであることに、次第に寂しさや哀しみを感じるようになりました。村の人々からは「バケモンだで~」「人の気を吸い取る」など、風評被害に晒され孤立していきます。

お里は悩んだ末に出家し“八尾比丘尼”と名を改め、村を去ります。旅先で人々と触れ合ううちに「命ある限り人のために尽くそう!」と決意。行く先々で貧しい人や病の人を助け、家事や農作業、力仕事にも尽力し、北陸から東北、北関東を巡り続けました。

お里が村を出て半世紀ほどの月日が流れた頃、お里の故郷の古寺に一人の尼の姿がありました。もう、その尼の正体を知る者はいません。尼は暫く寺に身を寄せた後、人知れず洞窟に入り800年の孤独から解放されたといいます。

若い姿のままで長生きとは羨ましい事ですが、人の何十倍もの時間をたった1人で生きることは、果たして幸せなのでしょうか?

 

北海道のアイヌ民族にもアイヌソッキという半身半魚の不老長寿の伝説が残されています。また、韓国には八百比丘尼とよく似た「ナンガン物語」という伝説があります。

 

人魚は世界共通で海の災害を暗示し、アジア圏では“人魚を食べると不老不死!”という話も付け加えられています。

欲のために無闇に生き物の命を奪ってはならない。限りある命だからこそ精一杯生きる。という教えなのでしょう。

あやかし、もののけの伝説とは、人生の儚さや生きる大切さを教えるために語り継がれているのかもしれません。

さて、次の「あやかし紀行」ではどんな“あやかしさん”と出会えるでしょうか…。

 

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放送作家 キャスティングプロデューサー
南鰻衣ルカ

本業はTV番組・イベントなどキャスティングP

音楽業界、芸能界、TV・ラジオ・イベント業界などを経て、現在に至る。

仕事の中で知り合った多くの人から不思議な話をたくさん聞き、不思議な事に

巡り合ううちに“不思議なモノ”や“目に見えぬものが”大好物に!

それらを伝えていこうと執筆している。

得意ジャンルは神話、伝承、歴史、天文、色彩、スピリチュアル、どうでもいい雑学。

趣味はイラストレーション、読書。

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