世界最大の「模擬宇宙」を生み出したのは?
みなさんは「模擬宇宙」という言葉を知っているだろうか。
2021年に出てきた宇宙ホットワードだ。
早速説明していこう。
私たちがいる宇宙には恒星の集団である銀河や、さらにその集合体の銀河団が存在している。その宇宙の構造形成を知るカギとなるのが暗黒物質(ダークマター)。宇宙の質量のおよそ8割を占めており、重力のみで作用するがそれ以外はほぼ謎に包まれている。
宇宙が誕生したのは今から約138億年前。そこから暗黒物質が重力で集まっていき、より多く集まった場所で星・銀河が誕生し、今の宇宙構造ができたとされている。
では銀河や光すらも飲み込むブラックホールなどの天体はどのように誕生したのか?それを知る手段はアメリカ・ハワイにある「すばる」やチリ・アタカマ砂漠にある「アルマ」などの巨大望遠鏡による観測だ。
観測の結果から宇宙構造の形成をひもとくには、宇宙の物理法則を総括した理論上から出来上がったモノと対比しなくてはならない。そのモノこそが「模擬宇宙」である。
模擬宇宙は宇宙誕生から現在に至るまでの暗黒物質にかかる重力の相互作用を、コンピュータでシミュレーションしなければ出来上がらない。
しかしこれまでの研究で使われてきたコンピュータでは計算能力に限界があり、観測結果と比較する上での空間的な広さと精密さに欠けていた。
その問題を解決するようになったのは、2018年から国立天文台が運用を始めたスーパーコンピュータ「アテルイⅡ」だ。日本、スペイン、アメリカなどの9ヶ国の研究者たちからなる国際研究チームにより、世界最大級の模擬宇宙を作り出すことができた。
「Uchuu(宇宙)」と名付けられたこのシミュレーション結果は3PB(ペタバイト; ペタは10の15乗を指す)にも及ぶ。研究チームは高性能計算技術によりデータを大きく圧縮させており、誰もが簡単に使えるような形式でWeb上に公開している。
シミュレーションによるデータが宇宙の大規模構造の進化や、銀河や巨大ブラックホールの形成の解明に向けた研究に今後貢献していくことだろう。
(参照動画)
ジャンル | 科学 |
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掲載日時 | 2023/4/20 16:00 |
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