重力レンズとはどんなレンズ?
レンズと聞いてあなたはまず何を思い浮かべるだろうか。
メガネのレンズ。近視には凹レンズ、遠視や老視には凸レンズのメガネが一般的。
理科の実験で使う顕微鏡のレンズ。組み立てる順番として、接眼レンズをつけてから対物レンズを設置するのがテストに出題されるのが今でも通例なのか。
またカメラにこだわりがある人にとっては、レンズにもこだわりがあるだろう。現在のスマホのレンズもハイクオリティーながら、フィルムやデジタルもひきを取らない。
宇宙に関係するレンズといえば天体望遠鏡に使われるレンズ(顕微鏡と同じ接眼レンズと対物レンズの2種類)を思いつくだろう。また宇宙観測に欠かせないレンズに重力レンズがある。今回はこの「重力レンズ」を説明しよう。
重力レンズ。正確にはレンズという「物体」ではなく、レンズという「現象」または「効果」であることに注意してもらいたい。
はるか遠くにある天体(例: 太陽以上の大きさを持つ恒星)から出されている光を含む電磁波が、銀河や銀河団を経由することで僕らがいる地球から観測すると10倍から最大1万倍ほど拡大するように見えてしまう。これが重力レンズだ。
拡大するように見えてしまうのは銀河や銀河団には重力場(重力つまり万有引力が作用している空間)による影響であり、その重力場がレンズと同じ効果を出していることから「重力レンズ」と呼ばれるようになった。また重力場となる天体をレンズ天体、レンズ効果を受ける天体を光源という。
この効果はアインシュタインが導き出した一般性相対理論より理論的に導出されていたが、実際に初めて発見されたのは1979年である。
重力レンズは点光源に見える非常に明るい一つの天体(クエーサーと呼ばれる)が二重に見える「双子のクェーサー」や、天体がリング状に広がって見える「アインシュタインリング」などの観測現象が見られるだけでなく、観測された像を解析することでレンズ天体の質量やその分布を求めることができて宇宙全体の質量分布や構造変化の推定が可能となった。また本来は観測できないような暗い天体を発掘することもできるため、まさに一石二鳥以上の貢献を重力レンズはしているのだ。重力レンズ、恐るべし。
ジャンル | 科学 |
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掲載日時 | 2021/10/31 16:00 |
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