シクロプロペニリデンが検出された土星の衛星は?
高校化学で学んだ炭化水素をまず紹介しよう。
単結合(二つの原子からそれぞれ電子を出し合う化学結合)からなる炭化水素(CとHの組み合わせ)のうち、鎖状のものをしているものをアルカン、環状のものをしているものをシクロアルカンと呼ぶ。
アルカンの構造式はCnH2n+2(n は1以上の整数)、シクロアルカンはCnH2n(n は 3以上の整数)となる。
二重結合(二つの原子からそれぞれ2つずつ電子を出し合う化学結合)からなる炭化水素のうち、鎖状をアルケン、環状をシクロアルケンと呼ぶ。
それぞれの構造式はCnH2n(n は1以上の整数)と、CnH2n-2(n は 3以上の整数)だ。
三重結合(二つの原子からそれぞれ4つずつ電子を出し合う化学結合)からなる炭化水素のうち、鎖状をアルキン[CnH2n-2(n は2以上の整数)]、環状をシクロアルキン[CnH2n-4(n は 3以上の整数)]と呼ぶ。ただしシクロアルキンはほとんどが不安定なため高校化学では問われない。
では文頭で出題したシクロプロペニリデンとはシクロアルキンの一種なのか。実は違う。
構造式はC3H2だが、ベンゼンなどが有名な芳香族の一種で地球上では実験室の中でしか存在しない化合物である。
シクロプロペニリデンは他の分子と反応し、別の物質を作り出す性質がある。
またこの化合物は化学反応が起きにくいとされる星間空間(星々の間に存在するガスや塵が集まっている空間)では検出されている。
そのため太陽系の大気中にはこれまで確認されていなかった。
ところが2020年10月に学術雑誌で、初めて太陽系の天体でシクロプロペニリデンが検出された論文が発表された。NASAゴダード宇宙飛行センターの研究グループがチリのアタカマ高知にある電波望遠鏡群・アルマ望遠鏡を用いた2016年と2017年の観測結果からわかったとのこと。
その天体は土星の第6衛星で最大の大きさを持っているタイタン。
タイタンの大気の主成分は窒素で、その地表にはメタンなどの炭化水素でできている雲・雨・川・湖が存在している。これは液体が安定した状態であることを意味しており、地球以外では2020年現在唯一なのだ。
この環境からタイタンにも生命の誕生を示唆する何かがあるのではないかと昨今着目されているそうだ。
2027年にNASAはタイタンに探査用ドローン「ドラゴンフライ(英語でトンボ)」を打ち上げて、環境や地質などを詳しく探査する予定とのこと。先の話にはなるが非常に楽しみだ。計画が実行されることを祈る!
ジャンル | 科学 |
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掲載日時 | 2021/2/13 16:00 |
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