プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」
『私が選ぶ名監督10人』(野村克也 光文社新書)
プロ野球クイズ王・尾林の野球本書評、第22回は、南海、ヤクルト、阪神、楽天で監督を歴任した野村克也さんの著書『私が選ぶ名監督10人』です。
さて、野村監督は自身も南海時代にリーグ優勝1回、ヤクルト時代にはリーグ優勝4回、日本一3回を達成した名将ですが、その野村監督から見た名監督として10人を挙げています。
その10人とは
西本幸雄…阪急、近鉄を弱小チームから常勝軍団に引き上げた「悲運の闘将」
川上哲治…巨人を9連覇に導いた前人未到の名監督
森祇晶 …西武黄金時代を築いた指揮官
鶴岡一人…野村監督の師匠であり、監督としては歴代最多勝利
三原脩 …「三原マジック」と呼ばれた変幻自在の采配で両リーグ日本一を達成
水原茂 …2リーグ制初期で巨人の絶対的強さを確立した名将
長嶋茂雄…国民的スターも監督としては浮き沈みの連続
星野仙一…中日、阪神、楽天を優勝に導いた燃える男
王貞治 …監督としては苦しんだ末に栄光をつかんだ苦労人
落合博満…オレ流采配で2000年代の野球界を席捲
です。
そして、最後に番外編として自らをあげています。
まず、冒頭で野村監督は監督を5つのタイプに分けており
- 「管理」して動かす
- 「納得」させて動かす
- 「情感」で動かす
- 「報酬」で動かす
- 自身の「実績」で動かす
と語っています。
また、この5つは時代が変わってもいつでも通用すると思われます。
昭和の時代は恐怖や感情(③の情感とは異なります)で選手を動かすことがまかり通っており、監督が選手を殴ったり、気に入らない選手は干したりといったことが当たり前に行われていました。
特に若いころの星野仙一監督は鉄拳制裁と恐怖政治で選手を支配していたのは有名な話です。
しかし、今は監督が選手に手をあげればパワハラで大問題にあり、さらにそんな監督にはすぐに
選手の気持ちも離れていくと思われます。
(先の星野監督も楽天の監督の頃には「仏の星野」になっていたようです。)
そのため、現在の監督に求められるのは「ことばで納得させる力」であり、その方法が「情感」「理論」と思われます。
現在のプロ野球ではオリックスを3連覇に導いた中嶋聡監督や、日本ハム監督→日本代表監督として2023年のWBCで優勝に導いた栗山英樹監督らが名監督とされますが、いずれも選手のモチベーションを高める手腕にたけていると思います。
さて、個々の監督に話をうつすと、やはり野村監督は師匠である鶴岡監督の影響を受けていると感じます。
それはマスコミを通じて選手の評価を伝えることで直接言うよりも選手のやる気を促すことや、「三流は無視、二流は賞賛、一流は非難」という野村監督独自の人心掌握術です。
その一方で反面教師としての影響も受けており、「結果論で選手を叱らずにプロセスを大事にする」というのは鶴岡監督のやり方から学んだのだと思います。
さて、そんな野村監督がしばしば語っていたことが「組織はリーダーの力量以上に伸びない」ということで、やはりリーダーは器を常に大きく持たなくてはならないということを自身の身に置き換えても痛感します。
さらに野村監督の言葉で「人を遺すは上」という言葉があります。
その言葉の通り、現在の監督ではヤクルト高津監督、ロッテ吉井監督、日本ハム新庄監督と野村監督の薫陶を受けた人物が監督を務めており、それを実践できたと思います。
野村監督自身は2020年に亡くなられましたが、野村イズムは確実に継承されており、野村監督の魂は今も生き続けていると思いました。
クイズにまいります。
テーマは「名監督」です。
【問題】
1 プロ野球監督として歴代3位の通算1657勝を記録している、巨人と阪神の両方で監督を務めた唯一の人物は誰でしょう?
2 名監督と称された鶴岡一人、三原脩、水原茂のうち、監督として最下位の経験があるのは誰でしょう?
3 1979年オフ、5位に終わった巨人の長嶋茂雄監督が敢行した「地獄のキャンプ」といわれる厳しい秋季キャンプを行った都市はどこでしょう?
4 プロ野球の発展にその年もっとも貢献した人物におくられる「正力松太郎賞」を最多の5度、そのうち監督として4度受賞している人物は誰でしょう?
5 1994年から98年はヤクルト、1999年から2001年は阪神、2006年から09年は楽天でコーチとして野村克也監督をサポートしたことから「ノムさんの名参謀」と呼ばれた人物は誰でしょう?
【正解】
1 藤本定義(ふじもと・さだよし)…1936年から42年に巨人、1961年から68年に阪神の監督を務めています。また、その間にパシフィック、金星・大映、阪急の監督も務めています。
2 三原脩…大洋時代の1961年とヤクルト時代の1971年に最下位となっています。
3 伊東市(静岡県)…「地獄の伊東キャンプ」と呼ばれます。
4 工藤公康…選手時代の1987年に1度、ソフトバンク監督時代に4度受賞しています。
5 松井優典(まつい・まさのり)…選手時代も1969年から74年に南海で野村さんとチームメイトとしてプレーしました。
ジャンル | プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」 |
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掲載日時 | 2023/10/30 16:00 |
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担当ジャンル:スポーツ
1973年生まれ 福岡県出身
職業 クイズ作家 株式会社キュービック所属
物心ついたころから40年来の東京ヤクルトスワローズのファン。
年間の観戦数は30試合から40試合ほど。
仕事の「クイズ」と趣味の「野球」を組み合わせた「野球クイズ」をライフワークとし
プレーヤー・イベンターともに「野球クイズ」の第一人者を自負
主な実績
①プレーヤー
『全日本プロ野球クイズ王決定戦』(2013年6月)優勝
『プロ野球マニア王決定戦』(2019年3月)優勝
②イベンター
『プロ野球12球団ファンクイズ王決定戦』(2019年5月~2020年1月)
(全12球団+各回の優勝者で日本一を争う「日本シリーズ」の全13回)開催
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