プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」
『打者が嫌がる投球論 投手が嫌がる打撃論』
(権藤博 二宮清純 廣済堂新書)
プロ野球クイズ王・尾林の野球本書評、第21回は、名投手コーチとして知られ、1998年には横浜監督としてチームを日本一に導いた権藤博さんと、スポーツジャーナリストの二宮清純さんの著書『打者が嫌がる投球論 投手が嫌がる打撃論』(廣済堂新書)です。
権藤さんは監督も務めていますが、むしろ中日、近鉄、ダイエー、および2017年のWBCでは日本代表で投手コーチを歴任し、「稀代の投手コーチ」としての評価が高い方です。
権藤さんは自身が現役時代「権藤、権藤、雨、権藤」と呼ばれるほど酷使された結果、投手としては5年しか活躍できなかった(その後野手に転向するも、活躍はできませんでした)経験から、「投手の方は消耗品」という持論を展開し投手には無理をさせない運用を行っています。
また1980年代、90年代には珍しく「フォームをいじらず、極力教えない」という教えを実践しました。
その一方で、投手コーチとして投手運用に関しては、監督にも臆せずにもの申したことから、歴代監督(中日時代の近藤監督および高木監督、近鉄時代の仰木監督、ダイエー時代の田淵監督と、ことごとく対立したことでも知られます。
しかし、それだけ自身の仕事に絶対的な自信と誇りをもっていたと言えます。
本題に入りますと、著書は権藤氏と二宮氏の対談形式で話が進みますが、投手コーチならではの視点は非常に新鮮で目からウロコが落ちる内容の連続でした。
最近私が思っていて共感できたのは「困ったら低めは日本野球の悪癖」という内容です。
以前は「困ったらアウトロー」という考えでしたが、低めのボールはバットが出やすいためパワーのある打者に安易に低めを投げるのは危険、むしろストレートが速い現代の投手は高めに力のあるボールを投げ込む方が有効という点でした。
また、権藤さんは横浜監督時代にヤクルトの野村克也監督とは指導法、野球への考え方がことごとく対立していましたが、方法論が違うだけで根柢の部分は似ていると感じました。
そして、最後に共感できたのは「投手の球種は先発なら3つ、抑えなら2つで良い」という点です。
現在の投手は5つも6つも球種を持っているのが常識となっていますが、それよりも1つ、2つの球種を磨くことが重要というのを感じます。
過去を見渡しても日米通算で201勝を挙げた野茂英雄投手はストレートとフォーク、「大魔神」と呼ばれた佐々木主浩投手も同じくストレートとフォーク、メジャーで通算602セーブを挙げたマリアノ・リベラ投手はストレートとカットボールで抑えていました。
現在の投手は多くの球種を操るのが常識とされますが、そんな中で、2023年はオリックスの山下舜平大投手がほぼストレートとカーブの2球種(たまにフォークを投げますが)で抑えたのは新鮮でした。
今後もこのような投手が出てくるか注目したいと思います。
クイズにまいります。
テーマは「権藤博」です。
【問題】
1 1961年、ルーキーの権藤博投手を「権藤、権藤、雨、権藤」と呼ばれるほど酷使して物議をかもした監督は誰でしょう?
2 1961年に中日の権藤博が記録した、新人としての最多勝利記録は何勝でしょう?
3 中日の一軍投手コーチ時代の1982年、抑えとしての適性を見出しクローザーに抜擢し、同年17セーブを挙げてリーグ優勝に貢献した投手は誰でしょう?
4 横浜監督に就任した1998年、選手に「あること」を行うと罰金1000円を課しましたが、それは自身に対してどのようなことを行った場合でしょう?
5 2017年のWBC日本代表の投手コーチ就任は、2015年のプレミア12の準決勝韓国戦での継投失敗による敗退がきっかけとされますが、この時の投手コーチは誰だったでしょう?
【正解】
1 濃人渉(のうにん・わたる)…中日監督時代は2年間で2位と、3位でしたが、ロッテ監督時代の1970年にリーグ優勝に導いています。
2 35勝…この年はルーキーながら最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振(この頃は公式タイトルではありませんでした)に輝き、沢村賞を受賞しました。
3 牛島和彦…通算126セーブを記録、また、セ・パ両リーグで最優秀救援投手のタイトルを獲得しています。
4 自身を監督と呼ぶ…肩書で呼ばせないことで、選手との垣根を作らないことが目的でした。
5 鹿取義隆…韓国戦ではクローザーの松井裕樹投手が不安定で、3‐0の3点リードで迎えた9回に本来は先発の則本昂大投手をイニングまたぎで投げさせるも4点を取られる痛恨の逆転負けでした。
ジャンル | プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」 |
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掲載日時 | 2023/10/23 16:00 |
タグ | 権藤博 尾林衡史のBBB |
担当ジャンル:スポーツ
1973年生まれ 福岡県出身
職業 クイズ作家 株式会社キュービック所属
物心ついたころから40年来の東京ヤクルトスワローズのファン。
年間の観戦数は30試合から40試合ほど。
仕事の「クイズ」と趣味の「野球」を組み合わせた「野球クイズ」をライフワークとし
プレーヤー・イベンターともに「野球クイズ」の第一人者を自負
主な実績
①プレーヤー
『全日本プロ野球クイズ王決定戦』(2013年6月)優勝
『プロ野球マニア王決定戦』(2019年3月)優勝
②イベンター
『プロ野球12球団ファンクイズ王決定戦』(2019年5月~2020年1月)
(全12球団+各回の優勝者で日本一を争う「日本シリーズ」の全13回)開催
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