プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」
『1988年のパ・リーグ』(山室寛之著 新潮社)
プロ野球クイズ王・尾林の野球本書評、第14回は元読売ジャイアンツ球団代表で野球史家の山室寛之さんの著書『1988年のパ・リーグ』です。
昭和最後のペナントレースとなったこの年のパ・リーグは南海がダイエーに、阪急がオリエントリース(同年、オリックスに社名変更)に売却され、そして今でも伝説として語り継がれる、10月19日の川崎球場のロッテ対近鉄のダブルヘッダー「10.19決戦」とドラマチックな1年でした。
私は1988年当時は福岡県に住む中学3年生で、福岡に球団があったころのライオンズの記憶はないため、地元・福岡に球団が来ることは非常に嬉しく思ったものです。
当時の南海は失礼ながら万年Bクラスでスター選手不在(門田博光選手という大スターはいましたが、福岡への移籍を拒否してオリックスにトレードされました)、どんな選手がいるのかもよく知りませんでしたが、同年の日米野球で大活躍した佐々木誠選手、現在はソフトバンクで監督を務める藤本博史選手、1989年にサヨナラ本塁打3本を記録した岸川勝也選手など、粗削りながら強打の選手がそろっており、高校生の頃は当時の平和台球場に機会見つけて行っていました。
一方、阪急の売却は非常に驚きでした。
南海は1988年4月に、「ワシの目の黒いうちはホークスは売らん」と豪語していた川勝伝オーナーが死去、南海電鉄は毎年10億円単位で赤字を出しているホークスを売却したがっていたためオーナーの死去と同時に売却は時間の問題でしたが、阪急が売却を考えているとはほとんどの人は予測していなかったためです。
ちなみにこの売却は10月19日に発表されたため、10.19決戦に隠れてほぼニュースとはなりませんでした。
売却後もダイエーが当時は絶頂期だったため、デザイナーの三宅一生氏にユニフォームをデザインを依頼、福岡にチャーター機で移動、ツインドーム構想(実際はひとつしか作りませんでしたが)など、派手なアピールを続けたのに対し、オリックスは非常に地味な形でスタートしました。
しかし、ダイエーはバブル崩壊とともに負の遺産に苦しみ2004年にソフトバンクに売却、一方オリックスは現在もチームを存続させるという結果になっており、オリックスの方が本社も野球も経営が上手だったと感じます。
そして、1988年のクライマックスともいえる10.19決戦です。
川崎球場のロッテ対近鉄のダブルヘッダーで、近鉄が2試合とも勝てば近鉄の優勝、ひとつでも敗れるか引き分ければ西武が優勝という状況で、第1試合は近鉄が9回表に勝ち越して制すも第2試合は10回時間切れ引き分けと近鉄にとっては無情の結果でした。
この本を読んで新たな気づきを得たのが、第2試合の9回裏ロッテの攻撃、無死1,2塁の場面で2塁走者の古川慎一選手の牽制タッチアウトをめぐるロッテ有藤通世監督の9分間にわたる抗議の場面でした。
当時はこの9分間の抗議のせいで11回に行くことができなかったとして有藤監督が一方的に悪いとされていました、また、私もそう思っていました。
しかし、実際は有藤監督は審判に状況を確認したらすぐに引き上げようとしたところ、近鉄の仰木彬監督から「早くやれ、早く」といわれたことで完全に切れたと語っており、この試合では近鉄側が勝ちたいあまりにロッテ側にとっては許しがたい行為がいくつかあったようで、ため込んでいた感情が「早くやれ、早く」の発言で一気に噴出したようです。
このとき、西武の森祇晶監督は西武球場で試合を見ていたものの途中から苦しくなり、コーチ陣と秋季キャンプの打ち合わせを行い、その後はカーラジオで聞いており、優勝が決まった時は「近鉄の壮絶な戦いに身ぶるいするほどの感動を覚えた。」と語っています。
近鉄は翌1989年にオリックス、西武との三つ巴の激戦を制して優勝、この時の悔しさを晴らす形となりました。
森監督時代の西武で唯一優勝を逃したシーズンであり、近鉄のリベンジを果たしたい思いがつまったものと思います。
クイズにまいります。
テーマは「10.19決戦」です。問題文は「1988年10月19日のロッテ対近鉄ダブルヘッダーで~」とつくものととらえてください。
【問題】
1 3-3の同点で迎えた第1試合9回表、2死2塁から決勝タイムリーを放った近鉄の選手で、第2試合を最後に引退したのは誰でしょう?
2 近鉄の投手で第1試合、第2試合と連投したのは阿波野秀幸と誰だったでしょう?
3 第2試合の8回裏に、結果として近鉄の優勝を拒む同点ホームランを放ったロッテの選手は誰でしょう?
4 引き分けとなる4時間のリミット3分前の10回裏に登板し、投球練習を行わず「3分で終わらせる」と語ったとされる近鉄の投手は誰でしょう?
5 1988年に西武の4連覇を決めた「ロッテ-近鉄」のダブルヘッダーが行われたのは10月19日ですが、1989年に西武の5連覇を事実上阻止した「西武-近鉄」のダブルヘッダーが行われたのは何月何日でしょう?
【正解】
1 梨田昌孝・・・センター前ヒットで二塁走者の鈴木貴久が生還し勝ち越しました。
2 吉井理人・・・2023年からは対戦相手のロッテの監督を務めるのは何かの縁でしょうか。
3 高沢秀昭・・・首位打者争いをしていましたが、タイトル獲得のために休むことはせずに出場、結果近鉄の優勝を拒むとともに首位打者のタイトルも獲得しました。
4 加藤哲郎・・・先頭打者に四球を与え、この時点で無念の時間切れとなりました。
5 10月12日・・・この時点で西武が連勝すればほぼ西武の優勝という状況でしたが、ブライアント選手の4打席連続本塁打などで西武を粉砕、2日後の10月14日に近鉄が優勝を決めました。
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掲載日時 | 2023/9/4 16:00 |
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担当ジャンル:スポーツ
1973年生まれ 福岡県出身
職業 クイズ作家 株式会社キュービック所属
物心ついたころから40年来の東京ヤクルトスワローズのファン。
年間の観戦数は30試合から40試合ほど。
仕事の「クイズ」と趣味の「野球」を組み合わせた「野球クイズ」をライフワークとし
プレーヤー・イベンターともに「野球クイズ」の第一人者を自負
主な実績
①プレーヤー
『全日本プロ野球クイズ王決定戦』(2013年6月)優勝
『プロ野球マニア王決定戦』(2019年3月)優勝
②イベンター
『プロ野球12球団ファンクイズ王決定戦』(2019年5月~2020年1月)
(全12球団+各回の優勝者で日本一を争う「日本シリーズ」の全13回)開催
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