プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」
『野村克也は東北で幸せだったのか』
(金野正之著 徳間書店)
プロ野球クイズ王・尾林の野球本書評、第12回は、河北新報記者で2007年~2009年の3年間、当時東北楽天ゴールデンイーグルスの監督の野村克也番記者を務めた金野正之氏の著書『野村克也は東北で幸せだったのか』です。
2004年オフに新規参入したプロ野球チーム・東北楽天ゴールデンイーグルスは田尾安志氏を初代監督に迎えるも97敗を喫し最下位に沈みます。
すると、田尾監督を1年で解任し、チームとしての土台をつくるために南海ホークス(現:福岡ソフトバンクホークス)、ヤクルトスワローズ、阪神タイガースで監督を務め、特にヤクルト監督時代に4度のリーグ制覇、3度の日本一を達成した野村克也氏を監督に招へいします。
著者の金野さんが野村番記者に就任したのは監督2年目の2007年からですが、このシーズンは
前年のドラフトで田中将大投手の獲得に成功し1年目から11勝で新人王を受賞、また山崎武司が本塁打王と打点王を獲得しチーム初のタイトルホルダーとなり、前年までの2年連続最下位から脱出し4位となり、ようやくチームとしての基礎が固まった年でした。
野村監督の3年契約最終年となる翌2008年は、エースの岩隈久志投手が21勝を挙げてMVPを受賞するもチームとしてかみ合わずに5位に沈みますが、野村監督が続行の意向をみせたことから1年契約で契約を延長します。
最後の年として臨んだ2009年は岩隈、田中の両投手に加え、後半から安定感抜群の投球をみせた永井怜投手の先発三本柱が活躍すると、野手陣も山崎選手の他に首位打者を獲得した鉄平選手、3割をマークした草野大輔選手、攻守の柱として奮闘した渡辺直人選手などの功績で初のAクラスとなる2位でフィニッシュし、クライマックスシリーズに進出します。
ところが、野村監督はクライマックスシリーズ直前に来シーズンの契約を行わないことを球団から告げられます。
金野さんは退任決定後に野村監督から「河北新報を味方にできなかった」というぼやきを聞いて、地元紙として野村監督をサポートできなかったことを悔やんだと語っています。
楽天のような地方都市の球団の場合、地元マスコミはファンの代表的な存在でもあり、著者の金野さんにしてみれば「チームの基礎を作り上げ、初のAクラスに導いた監督を辞めさせてはならない」と河北新報が取り上げれば仙台のファンを巻き込んで引き留められたと思ったのかもしれないと推測します。
しかし、野村監督はクライマックスシリーズで日本ハムに敗れると、両軍選手から胴上げされましたが、これが選手の野村監督への感謝や辞めてもらいたくないという思いが表れていたと感じます。
また、本書は単に記者の野村番としての振り返りのみならず、野村監督が仙台時代に懇意にしていた仙台三越の紳士服のテーラーさんや、同じく仙台三越のブティックで勤務する重い病気をかかえる女性(後に野村監督の計らいで始球式にも登場します)など、野村監督を支えた方々に丁寧に取材しており、野村監督への思いの強さを感じました。
楽天は現在、野村さんのヤクルト監督時代の教え子である石井一久氏が監督をつとめ、また、前述の永井氏が投手コーチ、渡辺氏が内野守備走塁兼打撃補佐コーチを務めるなど野村イズムを継承した人たちが多く指導者を務めており、まさに野村さんが生前語っていた「人をのこすは上」を体現していると思います。
これは余談ですが、楽天時代にもっとも厳しく指導したと思われる嶋基宏選手が、現在は野村さんが日本一に導いたヤクルトでコーチを務めているのも何かの縁と感じます。
結論、人間はその時だけの評価ではなく、後に何を遺したかまで含めて評価すべきで、その点で野村さんは東北で間違いなく幸せだったと思います。
クイズにまいります。
テーマは「野村克也(楽天監督時代)です。
【問題】
1 野村克也監督が楽天監督に就任した初年度の2006年の開幕投手は誰だったでしょう?
2 楽天監督前の社会人野球のシダックス監督時代の教え子で、2006年に育成ドラフトで楽天に入団し、2008年に支配下登録された人物は誰でしょう?
3 2007年にルーキーの田中将大投手が打たれて降板しても、その後に味方打線が奮起し敗戦投手とならなかったことから語った名ゼリフは何でしょう?
4 2007年から2009年まで楽天のヘッドコーチとして野村監督を支えた、野村さんのヤクルト監督時代に選手としてプレーしていた人物は誰でしょう?
5 野村克也監督の監督通算勝利数は1565勝ですが、通算敗戦数は史上最多となるいくつでしょう?
【正解】
1 一場靖弘…エースの岩隈投手の故障によるもので、一場投手はこの年に自身のキャリアで最高の7勝を挙げています。
2 中村真人…かなり変わった人物のようで、本書の第6章では「秘蔵っ子の告白」として1章まるまる取り上げられています。
3 マー君 神の子 不思議な子…2007年に11勝を挙げた田中投手は「球団初のシーズン2ケタ勝利投手」でした。
4 橋上秀樹…現在はBCリーグの新潟アルビレックスBCで監督を務めています。
5 1563敗…2008年終了時点では通算勝率5割を切っていましたが、2009年にAクラス進出したことでかろうじて5割を上回っています。それだけ、低迷するチームを託されたことを感じます。
ジャンル | プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」 |
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掲載日時 | 2023/8/21 16:00 |
タグ | 尾林衡史のBBB 野村克也 |
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担当ジャンル:スポーツ
1973年生まれ 福岡県出身
職業 クイズ作家 株式会社キュービック所属
物心ついたころから40年来の東京ヤクルトスワローズのファン。
年間の観戦数は30試合から40試合ほど。
仕事の「クイズ」と趣味の「野球」を組み合わせた「野球クイズ」をライフワークとし
プレーヤー・イベンターともに「野球クイズ」の第一人者を自負
主な実績
①プレーヤー
『全日本プロ野球クイズ王決定戦』(2013年6月)優勝
『プロ野球マニア王決定戦』(2019年3月)優勝
②イベンター
『プロ野球12球団ファンクイズ王決定戦』(2019年5月~2020年1月)
(全12球団+各回の優勝者で日本一を争う「日本シリーズ」の全13回)開催
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