プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」
『工藤公康 配球とは』
(工藤公康著 PHP)
プロ野球クイズ王・尾林の野球本書評、第11回は、前福岡ソフトバンクホークス監督で、現役時代に通算224勝を挙げた大投手・工藤公康氏の著書『工藤公康 配球とは』です。
工藤公康投手は名古屋電気工業高校(現:愛工大名電高校)から1981年ドラフト6位で西武に指名され入団します。
なお、余談ですがこの6位という指名順位は、本来なら1位指名確実といわれながら、社会人野球の熊谷組に就職を表明しており、プロには断りの連絡を入れていたため西武としても強行指名であり、そのため6位指名ながらこの年の1位指名の伊東勤選手よりも高額な契約金でした。
話を戻しますと、工藤投手は1年目から左の中継ぎとして一軍でプレーし、4年目の1985年に最優秀防御率のタイトルを獲得すると、そこから西武黄金時代のエースとして君臨します。
その後1994年オフにフリーエージェントで福岡ダイエーホークス(現:福岡ソフトバンクホークス)に移籍すると、当時チームが低迷していたこともあり、思うように勝ち星が伸びなくなります。
ここで工藤投手は「西武時代の伊東勤捕手の時は抑えられたのに、ホークスでは同じ球を投げても打たれる」ことから、捕手任せではなく自分で配球を考えながら投げることを意識し始めたと語っています。
本書では投手としての配球論以外に「第2章 扇の要」として捕手の配球にも言及しています。
これはホークス時代に「師弟関係」と呼ばれた城島健司捕手を徹底的に鍛え上げた自身の経験に基づいているものと思われますが、改めて城島健司捕手が一流の捕手になったのは、求道者ともいえる工藤投手の徹底的な指導と、それに食らいついた城島捕手の努力と感じます。
工藤投手は1999年にダイエー球団初の日本一を置き土産にする形で、その後は巨人→横浜→西武で47歳までプレー、特に巨人時代の2004年、2005年は40歳代にして2年連続2ケタ勝利、横浜に移籍した2007年は44歳シーズンにして7勝を挙げたのは、肉体の衰えをカバーする配球論のたまものと思いました。
プロ野球では
「若いときは体力でプレーする 中堅は技術でプレーする ベテランは経験でプレーする」
とよく言われますが、工藤投手の29年間にもおよぶ現役生活はまさにこれを体現したものといえます。
最後に本書を読んで印象的だったのは「第1章 配球の基本」の項目「短期決戦の基本」です。
工藤氏はホークス監督時代、ポストシーズン(クライマックスシリーズと日本シリーズ)は2016年のクライマックスシリーズで日本ハムに敗れた以外はすべて勝ち上がっており「短期決戦の鬼」といわれますが、あくまで基本は「シーズン中と同じ戦いを行う」ということで、特別な意識をしないことというのは少し意外でした。
選手としても監督としても特筆すべき実績を残した工藤氏には、是非今後ともプロ野球発展に尽力していただくことを願います。
クイズにまいります。
テーマは「工藤公康」です。
【問題】
1 工藤公康投手が1981年の夏の甲子園でノーヒットノーランを達成した相手校はどこでしょう?
2 西武が3敗1分で迎えた1986年の日本シリーズ第5戦12回裏に、工藤公康投手がサヨナラヒットを打った相手投手は誰だったでしょう?
3 工藤公康投手がもつ日本シリーズ歴代1位の通算記録「102」は、何の記録でしょう?
4 2007年、工藤公康投手が巨人から横浜へ移籍したのは誰のFA補償だったでしょう?
5 背番号47番がトレードマークの工藤公康投手が、ダイエー時代の1995年、96年につけていた背番号は21番ですが、最後の西武時代の2010年につけていた背番号は何番でしょう?
【正解】
1 長﨑北高校…この大会ではベスト4まで進むも、準決勝で金村義明(元近鉄ほか)擁する報徳学園高校に敗れました。
2 津田恒実…ここからシリーズの流れが変わり、西武が4連勝で逆転の日本一を達成しました。
3 通算奪三振…1999年日本シリーズ第1戦ではシリーズ記録(当時、現在はタイ記録)となる1試合13奪三振も記録しています。
4 門倉健…FA選手がその後FA選手の補償として移籍するのは、江藤智選手(巨人→西武)に次ぐ2人目のことでした。
5 55番…2010年当時、西武の背番号47番は帆足和幸投手がつけていました。
ジャンル | プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」 |
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掲載日時 | 2023/8/14 12:00 |
タグ | 尾林衡史のBBB 工藤公康 |
担当ジャンル:スポーツ
1973年生まれ 福岡県出身
職業 クイズ作家 株式会社キュービック所属
物心ついたころから40年来の東京ヤクルトスワローズのファン。
年間の観戦数は30試合から40試合ほど。
仕事の「クイズ」と趣味の「野球」を組み合わせた「野球クイズ」をライフワークとし
プレーヤー・イベンターともに「野球クイズ」の第一人者を自負
主な実績
①プレーヤー
『全日本プロ野球クイズ王決定戦』(2013年6月)優勝
『プロ野球マニア王決定戦』(2019年3月)優勝
②イベンター
『プロ野球12球団ファンクイズ王決定戦』(2019年5月~2020年1月)
(全12球団+各回の優勝者で日本一を争う「日本シリーズ」の全13回)開催
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