プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」vol.06
『江夏の21球』(山際淳司著 角川新書)
プロ野球クイズ王・尾林の野球本書評、第6回は、雑誌「Sports Graphic Number」の創刊号に掲載された山際淳司さんのエッセー『江夏の21球』です・
なお、この作品は1981年に山際さんのエッセー集『スローカーブを、もう一球』に掲載され、その後2017年に角川新書から『江夏の21球』として復刻されました。
今回は後者を紹介させていただきます。
1979年の広島対近鉄の日本シリーズ第7戦9回裏の攻防を克明に記した内容ですが、この対戦が今でも伝説として語られるのは山際さんのエッセーなくしてはあり得なかったと思います。
このエッセーを執筆するにあたり、山際さんが21球すべてに江夏さん本人に投げた意図やその時の心理状況をインタビューし、他の関係者にも細かくインタビューを重ねています。
ページ数としては新書版で30ページほどの内容ですが、それをはるかに上回る情報が詰まっています。
そして、この劇的な展開は、この日本シリーズならではの要因が数多くあったと感じます。
その要因とは
- この試合は近鉄のホームゲームでしたが、球場が大阪球場だったことで近鉄のホームアドバンテージが生かしきれなかったこと
(当時の近鉄の本拠地の藤井寺球場はナイター設備がなく、もうひとつ本拠で使っていた日生球場は収容人数が2万人ほどしかなかったためです。)
- この日は雨で9回裏時点ではすでに薄暗く、照明が点灯された状態で行われていたこと
9回裏に起きた、広島の捕手の水沼選手の2塁への悪送球や石渡選手のスクイズ失敗などはこの状況が深く関わっています。
- 大阪球場のブルペンがグラウンドから見える位置にあったこと
9回裏の途中から広島ブルペンで、池谷公二郎と北別府学両投手が投球練習をはじめており、この時の江夏投手の心理状況が克明に描かれています。
広島の古葉監督はあくまで延長にもつれこんだ際にそなえての準備でしたが、実は大阪球場には室内にもブルペンがあり、そちらで準備させていれば、江夏投手が心を揺さぶられることもなかったと思われます。
このエッセーでスポーツライターとして一躍名を挙げた山際さんですが、1995年に46歳の若さで死去しました。
生きていれば現在74歳、今年のWBCなども素晴らしいエッセーを書いたのではないかと感じます。
クイズにまいります。
テーマは「江夏豊」です。
【問題】
1 1979年の日本シリーズ第7戦の「江夏の21球」のクライマックスとされる、江夏豊投手が石渡茂選手のスクイズをはずしたのは、何球目のことだったでしょう?
2 南海時代の1977年、野村克也監督が江夏豊投手に当時格落ちとされていたクローザーに転向させるために語った言葉「野球界に○○を起こそう」の「○○」は何でしょう?
3 1973年8月30日、江夏豊選手がノーヒットノーランを達成した試合では延長11回裏に自らのサヨナラ本塁打で決着をつけましたが、この時本塁打を打った相手である中日の投手は誰でしょう?
4 1971年のオールスターゲーム第1戦で江夏豊投手が9連続三振を達成した球場はどこだったでしょう?
5 1985年1月19日、江夏豊投手が前年西武を退団した際に引退試合が行われなかったことから有志による引退試合を行った球場はどこだったでしょう?
【正解】
1 19球目…この時に三本間に挟まれてアウトになったのは藤瀬史朗選手でした。
2 革命…同年途中からクローザーに転向し、最優秀救援投手を獲得しました。
3 松本幸行(まつもと・ゆきつら)…中日のこの日の先発投手で11回まで江夏投手と投げ合いました。
4 西宮球場…この試合では全セの投手陣はノーヒットノーランを達成しています。
5 多摩市一本杉公園野球場…試合後のあいさつで大リーグ挑戦を表明、ミルウォーキー・ブリュワーズのキャンプに参加するもメジャー契約は勝ち取れずに断念しました。
ジャンル | プロ野球クイズ王・尾林衡史の「野球本書評」 |
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掲載日時 | 2023/7/10 16:00 |
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担当ジャンル:スポーツ
1973年生まれ 福岡県出身
職業 クイズ作家 株式会社キュービック所属
物心ついたころから40年来の東京ヤクルトスワローズのファン。
年間の観戦数は30試合から40試合ほど。
仕事の「クイズ」と趣味の「野球」を組み合わせた「野球クイズ」をライフワークとし
プレーヤー・イベンターともに「野球クイズ」の第一人者を自負
主な実績
①プレーヤー
『全日本プロ野球クイズ王決定戦』(2013年6月)優勝
『プロ野球マニア王決定戦』(2019年3月)優勝
②イベンター
『プロ野球12球団ファンクイズ王決定戦』(2019年5月~2020年1月)
(全12球団+各回の優勝者で日本一を争う「日本シリーズ」の全13回)開催
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