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仏像の種類、見分けるポイントとは何?(後編)

(前編はこちら)

4回目にしてまとめきれず前後編となったが、今回は如来と菩薩について触れていきたい。

まず、大前提として如来像は少々人間離れしたところもあるが、顔や手が通常の人間より多いというものはない。頭部に顔が複数ある十一面観音や、手が42本の手がある千手観音のように、一目でわかる人外的な様相のものは菩薩像となる。
それを除いてもっとも見分けがつきやすそうなのは如来の頭部の盛り上がり(肉髻、にっけい)と螺髪(らほつ)だろう。これらはともに以前紹介した仏の三十二相のひとつで、螺髪とはパンチパーマのような髪型のことだ。これは縮れて右巻きの螺旋状になっているとされるが、仏像では巻き貝のような形で表現されることが多い。双方とも頭部の特徴であることから推測がつくと思われるが、仏の智慧が優れていることを示している。
一方の菩薩はまだ仏となっていないため、螺髪などはない。髪については様々な形に結い上げていたり、肩に垂らしていたりする。
清凉寺式釈迦如来像という、螺髪でない如来像もあるが、これは釈迦の生前の姿を模したものとされる。名前の通り京都の清涼寺のものが日本での大元となっているが、そのさらに前に中央アジア経由で中国に伝わったものなので、顔つきが中央アジア風であったり、衣がぴったり張り付くような感じであったりと、区別しやすい特徴がある。

もう少し細かい点にも注目できるなら、装飾品の有無も要素のひとつだ。基本的に如来は装飾品の類いを身につけておらず、質素な衣のみを身にまとっている。一方、菩薩は冠やネックレス(瓔珞、ようらく)などの装飾品が目につく。瓔珞はサンスクリット語で「真珠の首飾り」を意味する“muktāhāra”(ムクターハーラ)を語源とする。これは菩薩が修行中ということで王族時代の釈尊がモデルとなっているためだ。
お地蔵様こと地蔵菩薩も名前の通り菩薩ではあるが、装飾品は身につけていない。しかし、地蔵菩薩は頭を丸めた僧の外見なため、見分けるのは容易だ。

しかし、上記の見分けやすいものとは別の例外もある。螺髪がなく、装飾品を身につけている如来がいる。真言宗の御本尊である大日如来がそれにあたる。
大日如来は宇宙の中心的存在であり、最高位の仏とされる。そのため、王のように装飾品を身につけている。ここまで書くと菩薩と見分けがつかなくなりそうだが、大日如来をピンポイントで見分けることは可能だ。大日如来の手の形に注目すると、2つのパターンがある。
1つは「智拳印」という、左手の人差し指を伸ばし、右手でそれを握るという、忍者が術を使う場合の、上のほうにした手の指が立っていないものだ。これは仏の智慧の境地に入ることを意味している。
もう1つは「法界定印」という、右手を下にして左手を上にして組んで親指同士をつけた座禅時の形で、慈悲の心を示している。

印の話が出たが、手も判別できるポイントのひとつだ。菩薩像には蓮華(花)、水瓶、宝剣など持物があることが多いが、如来像は基本的に手には何も持たず、印を示している。
この印というものはそこまで複雑な形ではない。たとえば、奈良の大仏の手は右手を控えめに上げ、左手の中・薬指を軽く曲げて手のひらを上に向けている。この右手は施無畏印といい、相手に恐れる必要は無いと伝えるもの、左手は与願印といい、相手の願いを叶えるという意味を持つ。
この2つと似ているのが、阿弥陀如来の作る来迎印(らいごういん)と摂取不捨印だ。これは先の施無畏印と与願印の、親指と人差し指で輪を作っている版とイメージしてもらえるといい。阿弥陀如来が臨終に際して極楽浄土から迎えに来るときのポーズとされる。
しかし、ここにも例外がいる。薬師如来は先の与願印の手に薬壺を持っている、持物のある唯一の如来だ。だが、多くの薬師如来はもう一方の施無畏印の薬指を少しだけ前に出しているということで判別は可能だ。また、先の通り螺髪もあるので、別の点でも見分けがつく。

ここまでの話を総合すると、まずは表情で50%程度まで絞り込める。その他は頭部・服装・性別種族を一部の例外を頭に入れながら見てみれば、4種の分類はほぼ間違いない。
さらにもう一歩踏み込んだ如来の中での見分け方などについては別の機会に触れられればと思う。

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浄土宗 願生寺 住職/有限会社 セブンワンダーズ所属 クイズクリエーター
遠藤和成

学習院大学文学部史学科卒

大正大学大学院仏教学研究科浄土学専攻修士課程修了

高校・大学は剣道部、前職は中学・高校の社会科教員。クイズ作家としてはクイズ研究会やサークル所属経験のない異色の経歴。クイズ番組は好きだったが、プレイヤーとしての経験はアーケードゲームのみ。

僧侶としても、仏教系大学に大学院のみ在籍という極少数派。

有限会社セブンワンダーズ入社後は僧侶とクイズ作家の兼業で活動。法話にもクイズ作成で得た知識や要素を取り入れ、独自性のあるものを展開しているほか、寺院での「仏教クイズ」も企画している。

好きなジャンルは仏教、世界史、サッカー。

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