ナトリウムを吹き出している太陽系小惑星は?
「ナトリウム」と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか。
化学的には原子番号11、元素記号Na、アルカリ金属、典型元素など様々なキーワードが出てくる。
金属そのものは銀白色でナイフで切れるほど柔らかいが、空気中にさらしているとすぐ酸化してしまうので灯油中に保存しなければならない。
また素手でさわると水酸化ナトリウムとなって手を傷つけるため、劇物に指定されている。
一方でナトリウムは人体に必要なミネラルの一つであり、主に食塩(塩化ナトリウム)の形で私たちは摂取している。ただしとり過ぎてしまうと、高血圧やガンなどの生活習慣病につながるのでご注意を。
それでは地球科学・天文学的視点からみて、ナトリウムはどのような存在だろうか。
アルカリ金属元素の中では地球での存在量が最も多く、塩化ナトリウムの形で海水に溶けていたり岩塩層として自然界に存在している。
地球大気の高度90km付近には約10kmの厚さのナトリウム層があり、地球にやってきた流星や隕石が蒸発してできあがったとされている。
ちなみにナトリウム層を最初に発見したのはアメリカの天文学者であるヴェスト・スライファー(1875-1969)だ。
2021年8月にNASAジェット推進研究所の研究グループが小惑星「ファエトン(フェートンと記載されている所もあり)」にまつわる発表があった。
それはこの小惑星がナトリウムを放出しながら太陽を公転しているかもしれないということだ。
ファエトンはアポロ群に属している地球近傍小惑星の一つで、1983年に発見されている。
太陽を細長い楕円軌道で公転しており、太陽に近づいた際に明るさを増して塵などを放出している。そのためファエトンは彗星と小惑星との中間的存在「活動的小惑星」の一つとして知られている。
研究グループはかつてメキシコに落下した隕石の試料を用いて、ファエトンの自転周期と表面最高温度を模擬して加熱する実験を行なった。結果、試料からナトリウムの放出が確認されたが、他の元素は残っていた。そこから研究チームはファエトンにも同様のことが起きているのではないかという推論に至ったのだ。
JAXAは2024年に深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」を打ち上げて、ファエトンの表面撮影や塵の組成分析などを計画している。今後のファエトンからは目を離せません!
ジャンル | 科学 |
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掲載日時 | 2022/7/29 16:00 |
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