琵琶法師って何をしている人?
「琵琶法師」をご存じですか?
ちなみに「琵琶法師」は人の名(=固有名詞)ではなく、総称だということを知っていましたか?
では、さらに踏み込んで。
琵琶法師は「どういう人」の総称なのかはご存じですか?
日本文学史上、大切な役割を果たした琵琶法師について紹介していきます。
琵琶法師とは「琵琶」というギターのような楽器を持って路上で弾き語りをする人です。
弾き語りの内容は物語。特に『平家物語』でした。
『平家物語』は、平安末期の平家が力を持った時代から滅亡するまでの戦いの様子を描いた作品です。
実際の出来事を題材にしてはいますが、弾き語りという特性上、人々の足を止めて「聞かせる」必要があるため、多少の脚色はあったでしょう。
現代で言うと、ギターを持って路上で歌うストリートミュージシャンでしょうか。
よって『平家物語』は、最初は書物の形ではなく、口で伝えられるものでした。
口伝だったために、ほかの作品とは違う特徴が大きく3つあります。
①ストーリーと登場人物がとても魅力的
路上での弾き語りが職業なので、聴衆を集めなければなりませんでした。
琵琶法師は
「この話はこの展開の方がおもしろいんじゃないか」
「ウケが悪いからこの場面はばっさり切ろう」
「ほんとに言ったかわからないけど、おもしろいからセリフ付け足しちゃえ!」
と人の足を止めるために試行錯誤したと思われます。
『平家物語』はストーリーがとてもおもしろいです。
平家が武士として栄えて落ちぶれていく過程ももちろんですが、
登場する武士が「どんな思いを抱えて戦っていたのか」がわかり、感情に訴えかけてきます。
②声に出して読みたくなる
『平家物語』の冒頭は
祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり…
ととてもリズムがよく、朗読したくなる文章です。
リズムがよいのも、『平家物語』がもともと口伝だったことを知っていれば納得です。
③いろんなバージョンがある
『平家物語』は口で語られるものだったため、もともとは書物の形ではありませんでした。
さらに、琵琶法師がそれぞれ独自の解釈や創作を付け加えたため、「これが正しい『平家物語』だ!」と決まった形はありませんでした。
定まらないものをそれぞれ文字に起こしたものが現代に伝わっているので、現在でも『平家物語』と一口に言っても、いくつかの系統の『平家物語』があります。
ある場面の有無という大きなものから、セリフの違いという小さなものまで、数え始めるといくらでも出てきます。
琵琶法師が伝えてきた『平家物語』。声に出して味わってみませんか?
ジャンル | ことば・文学 |
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掲載日時 | 2022/3/9 16:00 |
大阪府出身・在住。
同志社大学文学部国文学科卒業。
現在は予備校で(比較的)新人講師として勤務。
担当ジャンルは【古典文学】
授業では、本編よりも脱線話の方がウケて悲しい反面、過去の自分もそうだったので生徒を責められません。小ネタを収集する日々です。
基本どんなジャンルでも興味あり!
でも、結局言葉(=ことのは)のもつ魅力から逃れられずここまで来てしまいました。
尊敬する人は中2のときからロザンの宇治原さん。好きなことは、得意ジャンルが全く違う同居人とクイズ番組を見ながらやいやい言うこと。
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