彼岸に先祖供養をするのはなぜ?
「暑さ寒さも彼岸まで」ということで、過ごしやすい季節も迫っている。このような言葉もあることから「彼岸」というものの認知度は高いと推測され、実際に墓参りや掃除を行う方も多いだろう。
しかし、なぜ3・9月なのか。そして、なぜ先祖供養をする風習があるのか。今回はそこについて触れていこうと思う。
まず、一般的に彼岸とされる期間は、春分・秋分の日を中日とした前後3日ずつの計7日間のことを指す。知っての通り、春分・秋分は毎年同日ではないので、彼岸もそれに伴い前後する。
そして、なぜこの2日なのかというと、我々の祖先が往生した極楽浄土は西にあるとされ、ちょうど真西に太陽が沈むこの2日には思いを西方にはせて先祖供養を行うとされたためである。
理由はもうひとつある。仏教の教えに「中道(ちゅうどう)」というものがあり、これに関係する。中道とは、教派などにより多少の差異はあるものの、基本的には読んで字の如くどちらか一方に偏らないことである。
春分・秋分の太陽が真東から上り、真西に沈むこと、これが中道の教えを示しているというためだ。
また、彼岸というのはこの期間のことだけではなく、悟りの世界や極楽浄土、大雑把な言い方をしてしまえば「あの世」ということである。対義語として、今我々が生きている迷いの世界のことを「此岸(しがん)」という。
なぜ「岸」とされるか、明確な理由は不明だが、最古レベルの仏典から既に仏教の教えを船などにたとえ、煩悩などの流れを乗り越えて悟りの境地にいたるというような話が見られる。
そして、この彼岸自体、もしくはそこへ到るための修行のことをパーラミター(Pāramitā)といい、『摩訶般若波羅蜜多心経』で知られる「波羅蜜(多)」の字が当てられている。
そして、この修行に「六波羅蜜」というものがある。具体的な内容は
①布施(ふせ)-見返りを求めずに善行を施す
②持戒(じかい)-規律を守って他人に迷惑をかけない
③忍辱(にんにく)-怒りを捨て耐えしのぶ
④精進(しょうじん)-正しい努力を続ける
⑤禅定(ぜんじょう)-心を常に落ち着かせる
⑥智慧(ちえ)-怒りなどマイナスの感情にとらわれない
たった6つではあるものの、常に続けるのは難しいといえるだろう。
これから迎える秋分の日は祝日法で「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ。」とされている日である。そのため、ぜひ先祖供養をしていただきたいが、併せて六波羅蜜を1日1つでも実践してみてはいかがだろうか。
あと、お参りの際によく聞かれるのは、帰りに寄り道をしてもいいかということ。これは基本的に問題ないし、久々に親族と会って食事をすることもあるだろう。
また、連休ということもあり、どこかへ行く途中に立ち寄るという方もいる。これも問題ないし、当山では決まってそういう方もおり、お参りも朝早かったりするのだが、念頭に置いてやや早く開門している。
今年は外出を推奨するわけにはいかないが、放置して気になるくらいなら、少しでも立ち寄って挨拶をしていくといいだろう。
ジャンル | 社会 |
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掲載日時 | 2020/9/8 16:00 |
学習院大学文学部史学科卒
大正大学大学院仏教学研究科浄土学専攻修士課程修了
高校・大学は剣道部、前職は中学・高校の社会科教員。クイズ作家としてはクイズ研究会やサークル所属経験のない異色の経歴。クイズ番組は好きだったが、プレイヤーとしての経験はアーケードゲームのみ。
僧侶としても、仏教系大学に大学院のみ在籍という極少数派。
有限会社セブンワンダーズ入社後は僧侶とクイズ作家の兼業で活動。法話にもクイズ作成で得た知識や要素を取り入れ、独自性のあるものを展開しているほか、寺院での「仏教クイズ」も企画している。
好きなジャンルは仏教、世界史、サッカー。
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