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原始仏教教団のイケメンといえば誰?

前回触れた清少納言も「坊主は美形のほうが良い」といっていたが、現代でもおそらくそうだろう。『美坊主図鑑』(2012年発売)も結構話題になっていた記憶がある。

そんなわけで、美形の僧侶はいくらでもいるだろうが、今回は原始仏教教団におけるイケメンを題材とさせていただこうと思う。

 

最初に答えをいってしまうと、釈尊の側に25年仕えて説法を常に間近で聞いていたため「聞法第一」と称された、十大弟子のひとり・阿難(アナン、阿難陀とも)尊者がその人である。

阿難
阿難

彼の出自には不明確なところもあるが、釈尊のいとこなどといわれ、いずれにしろ血縁関係がある人物とされる。

当時の出家者の格好は何となくイメージできると思うが、阿難尊者は釈尊から、女性の修行の妨げにならないよう肌の露出を少なくすることを指導されたという。

他にもモテエピソードも有名なものとして、幸田露伴が短編小説の題材としているプラクリティ(小説のほうは時代を感じる『プラクリチ』表記)という女性のストーカー騒動がある。

あるとき托鉢中の阿難尊者が水を求めてこのプラクリティに話しかける。しかし、いわゆる不可触民であった彼女は身分の低さを理由にこれを拒む。しかし、阿難尊者は釈尊の教えに身分など関係ないとして彼女から水をもらい、丁寧なお礼をして去って行く。

しかし、ビジュアルに加えてこの優しさがプラクリティのハートをがっちりつかんでしまい、彼女は母親が調合した惚れ薬を飲まそうとしたり(呪術をかけたとも)、阿難尊者につきまとって「彼は私の夫だ」と触れ回ったりする。

現代なら警察沙汰だが、困った阿難尊者は釈尊に助けを求める。釈尊はプラクリティに同じ修行者の姿になることを求め、そこで、彼女に阿難尊者のどこが好きなのかを聞いたところ、「目も鼻も口も全てが好き」というありがちな答えがあった。

これに対し釈尊は「目には涙、鼻には鼻水、体には糞尿が詰まっているのに何がそんなにいいのか」と返す。これをはじめとして懇々と教えを説いたところ、プラクリティは自らを恥じ、正式に出家することとなる。

不可触民を弟子にすることは批判的な声もあったというが、彼女は熱心に修行に励んだという。

 

しかも、阿難尊者は美形なだけでなくデキる男で、仏教において重要なことを成し遂げている。

ひとつは釈尊の育ての親である摩訶波闍波提(まかはじゃばだい、マハーパジャーパティー)、喬答弥(きょうとみ)ともいわれるが、彼女が出家を願った際、渋る釈尊を説得し、尼僧教団を成立させた。彼により女性にも門戸が開かれたことになる。また、ここで説得に応じたことから、釈尊は彼のことを非常に信頼していたのがわかるだろう。

もうひとつは以前に触れた結集の際のことだ。多聞第一とされている以上、釈尊入滅後の結集には阿難尊者は欠かせない人材のはずである。しかし、当初はまだ悟りに至っておらず、メンバーから外されていた。最終的には同じく十大弟子のひとりで結集の中心人物である摩訶迦葉(まかかしょう、マハーカッサパ)のもと悟りを得て結集に参加が許される。

そして、当然ながら多くの教えを口述した。『阿弥陀経』のところでも触れたが、経典の出だしには「如是我聞」のようなものが多いが、これらの「我」のほとんどは阿難尊者のことだ。

つまり、仏教の教えが数多く現代に残っているのも、阿難尊者の功績がとてつもなく大きいのである。

 

優しいイケメンで有能、このような人材がいると、現代でも仏教に関心を持ってもらうことに大きな効果がありそうだ。

とはいいつつも、僧侶は真面目かつストイックあって欲しいという声もしっかりあるようで、以前あるイベントのアンケートで「僧侶が女性とつるんでいる姿は見たくない」というものがあったらしい。ちょっとしたアイドル的な方とのトークがあまり好ましくないと映った方もいたようだ。

さすがに「目を上げて女人を見ず」という生活はできないが、自戒も必要だと感じるところだ。

 

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浄土宗 願生寺 住職/有限会社 セブンワンダーズ所属 クイズクリエーター
遠藤和成

学習院大学文学部史学科卒

大正大学大学院仏教学研究科浄土学専攻修士課程修了

高校・大学は剣道部、前職は中学・高校の社会科教員。クイズ作家としてはクイズ研究会やサークル所属経験のない異色の経歴。クイズ番組は好きだったが、プレイヤーとしての経験はアーケードゲームのみ。

僧侶としても、仏教系大学に大学院のみ在籍という極少数派。

有限会社セブンワンダーズ入社後は僧侶とクイズ作家の兼業で活動。法話にもクイズ作成で得た知識や要素を取り入れ、独自性のあるものを展開しているほか、寺院での「仏教クイズ」も企画している。

好きなジャンルは仏教、世界史、サッカー。

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